受賞を逃した名作は?

(1)『ローマの休日』(1953)
 オードリー・ヘプバーンが初のハリウッド映画出演にして主演女優賞に輝いた誰もが知る名作ですが、第26回で作品賞など8部門を制したのは『地上(ここ)より永遠(とわ』に』(1953)の方でした。表層的には大人の男女による不倫劇ですが太平洋戦争終結から8年が経過した時代に第二次世界大戦を再検証した点が、劇場公開当時は朝鮮戦争中だったアメリカにとって重要だったのです。そういった歴史的な視点によって評価された作品は、時代と共に記憶が薄れ、風化してしまいがちです。

(2)『スター・ウォーズ』(1977)
 第50回で圧勝したのは、ウディ・アレン監督・主演・脚本の『アニー・ホール』(1977)でした。『スター・ウォーズ』(1977)は技術賞での受賞にとどまりましたが、アカデミー賞においてSFというジャンルに対する評価は低い現実があります。また、その年の興行記録を打ち立てるようなメガヒット作品を、映画芸術科学アカデミーの会員たちが何故か敬遠しがちだという傾向も存在しています。

(3)『レイジング・ブル』(1980)
 アメリカ国立フィルム登録簿に登録され、当時の映画賞を総なめした本作もアカデミー賞では辛酸を舐めました。マーティン・スコセッシ監督の作品賞受賞は、香港映画のリメイク作品であり、ファンの間では必ずしも評価が高くない第79回の『ディパーテッド』(2006)まで待つことになります。7度目の正直となった『ディパーテッド』の功労賞的な受賞は、作品の評価と受賞結果とが映画ファンの間で乖離した好例です。

次の記事に続く ハリウッドのプロは「歌舞伎メイク」の“ここ”を見ていた…映画『国宝』が2026年アカデミー賞でノミネートされる“意外な理由”