『おさるのベン』

 こちらも、空間を限定したエンターテインメント作品だ。

 人間の会話も理解できるほどに知能の高いチンパンジーが狂犬病に感染してしまい、飼い主の一家に襲いかかる──というもの。人間は多数いてチンパンジーは1匹。そのため、映画としてもつのかという不安があったものの、この作品も設定や演出の細かな配慮が行き届いていて、緊張感の途切れない内容になっている。

 チンパンジーは泳げないという習性を理解している人間側は、自宅のプールへと逃げる。そうなるとチンパンジーはプールサイドで待機するしかない。一方の人間側も、プールの反対側が崖で唯一の脱出口となる階段をチンパンジーに押さえられているため、ここから逃げるのも難しい。だが、ずっと水に浸かっていると衰弱するのみ。助けも呼べない。ケガ人も出ている。そのため、プールサイドに置かれたビニールのボートやスマートフォンを手に入れる必要がある。チンパンジーは狂犬病に感染して聴覚が過敏になっているため、ちょっとした音で気づかれる。いかにして、状況を突破するか──。

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『おさるのベン』

 一つ一つミッションが提示されていき、その度に、それを達成する上でどのような困難があるかが描かれている。また、一つの状況を勝利するために採った選択が次なる困難を生む伏線になることもあり、チンパンジーの怖さだけで強引に持っていく粗雑なパニック映画のように思わせて、実は丁寧かつ繊細な構成だったりする。

 限定空間でのパニック状況、一つ一つの困難を突破するサスペンス、緻密に作られたプロットというと、映画『ダイ・ハード』を思い起こすものがある。作り手側も実際にかなり意識しているのだろう。特に終盤、「あ、『ダイ・ハード』だ!」と思わせる場面がいくつかあり、しかもそれが効果的に使われているため嬉しくなってくる。

『おさるのベン』
監督・脚本:ヨハネス・ロバーツ/出演:トロイ・コッツァー、ジョニー・セコイア、ジェシカ・アレクサンダー、ビクトリア・ワイアント/2026年/アメリカ/89分/配給:東和ピクチャーズ/©2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved./2月20日(金)全国ロードショー