『ブゴニア』
最後の一本も、空間を限定した作品だ。地元にある巨大製薬会社の女性経営者を侵略宇宙人の先兵だと考えた男が従弟と組んで彼女を誘拐、地下室で拷問にかけるというもの。経営者をエマ・ストーン、誘拐犯をジェシー・プレモンスが演じる。
エマ・ストーン×ヨルゴス・ランティモス監督の組み合わせな上にプロデューサーにアリ・アスターが入っているため、わかりやすいエンターテインメントにはなっていない。この座組ならではの、正気と狂気の境界線の見えないシュールな演出に貫かれている。
ただ、今回は韓国映画『地球を守れ!』のリメイクであり、ブラックコメディとしてのニュアンスも強い。そのため、彼らの過去作品に比べると物語の軸はしっかりしており、「楽しい」と思わせてくれる内容でもある。
また『HELP/復讐島』と同じく、「狂気の陰謀論者に囚われた哀れな女性」という単純な構図になっていない点も、観ていて緊張感を途切れさせない。当初は陰謀論者により監禁され、頭を坊主にさせられた挙句に食事や排せつも満足にできず、酷い拷問に苦しめられ続ける──と、これ以上ないほど理不尽な目に遭い続ける。が、彼女はそれだけでは終わらない。心理戦を仕掛け、徐々に状況を改善させ、関係性の逆転を謀るのだ。
闘争心を発揮させてからのエマ・ストーンが実に頼もしい。狂気VS狂気の構図から陰謀論者を上回る狂気、そして実はその裏側に──という大きく変化していく状況を演じる様はヒロイックですらある。
中盤以降はアッと驚く展開の連続で、全く先が読めなくなる。両者ともに意外な背景が明らかになり、それが絶えず双方の危機的状況を生み出すトリガーになるプロットが抜群だ。攻守が目まぐるしく入れ替わる怒涛にひたすら呆然と押し流されているうちに、物語はとんでもない終焉を迎える。今の世界状況を見ていると、本作の終焉における風刺性は決して突飛なものでないように受け止めることができるのが、最も恐ろしいことでもある。
『ブゴニア』
監督:ヨルゴス・ランティモス/出演:エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、エイダン・デルビス/2025年/アイルランド・イギリス・カナダ・韓国・アメリカ/118分/配給:ギャガ ユニバーサル映画/©2025 FOCUS FEATURES LLC./2月13日(金) TOHOシネマズ日比谷 他 全国ロードショー
