相談者の一部は生活保護につなぐわけだが、彼らはアパート入居によって「足場」ができたことで、それまでのような寮付き派遣やリゾートバイトといった仕事を選びづらくなる。ここに「生活保護は恥」「早く抜けなければ」という焦燥感が追い打ちをかけ、手軽にできるスキマバイトを始めてしまうのだという。佐々木さんは「ここで生活保護の制度上の『罠』にはまることになります」と指摘する。どういうことか。
金銭管理に失敗し家賃滞納へ
生活保護では、利用中に得た就労収入は「収入認定」され、「勤労控除」などによる控除額を除き保護費から差し引かれる。同制度はあくまでも最低生活費に満たない部分を補うことが目的だからだ。
このため例えばスキマバイトで月13万円を稼いだとしても、手元に残るのは数万円ほど。残りの10万円以上は翌月、福祉事務所の事務作業のタイミングによっては翌々月の保護費から差し引かれるか、もしくは返還することになる。
本来は13万円すべてを“貯蓄”し、翌月以降の保護費減額に備えなければならないのだが、佐々木さんは「ただでさえぎりぎりの生活の中、日々3000円、5000円といった現金が入ってくるスキマバイトの収入をストイックに貯めるという金銭管理は極めて難しい」という。その結果、最も大きい固定費である家賃が真っ先に払えなくなる。
さらにスキマバイトでは翌月も同水準の収入が得られる保障はない。ワーカーが仕事を入れても企業によるキャンセルや、定時よりも早い時刻で退勤させられる「早上がり」のせいで見込んでいた稼ぎが入らないことはざら。月収が半分以下になることもある。一方の福祉事務所による「収入認定」は前月の実績に基づくことが多く、最悪の場合、保護費減額とスキマバイトの収入減のダブルパンチとなる。
また、体力のある人の中には複数のアプリを掛け持ちし、一時的とはいえ月20万〜30万円ほど稼ぐ人もおり、そうなると、今度は生活保護が廃止されてしまう。廃止後は支給されすぎた保護費の返還と家賃滞納と不安定な仕事だけが残る、というのだ。