杉並区「生活保護の廃止は慎重に判断」

事件が起きた杉並区で生活保護行政を所管する杉並福祉事務所は取材に対し、「(容疑者の男性が)生活保護を受給していたかなどの情報は個人情報であり、具体的なお答えをすることはありません」という旨を書面で回答したうえで、就労支援や保護廃止の判断についておおむね次のように説明した。

「(稼働年齢層への)就労支援の基本は安定した収入を目指すもので、いたずらに日雇いのような仕事を勧めることはありません。廃止については、定期収入を恒常的・安定的に得られる見込みがあるか、特別な事態が生じない限り保護を再開する必要がないかなどを見極め、本人からも自立のめどを聞き取るなどして慎重に判断しています。また廃止の際は、今後生活に困窮した場合はいつでも相談するよう伝えることを原則としています」

一方でかつて首都圏のある自治体で、生活保護を利用しながら日払いの仕事をしたという30代の男性はケースワーカーとのやり取りのタイミングが合わず、翌々月に2カ月分の収入の返還を求められ、食費にも事欠く生活を強いられた。男性は「収入認定の仕組みは複雑。もう少し丁寧に説明してほしかった」と振り返る。

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10日分の仕事を一方的にキャンセルされた

また、スキマバイトで生計を立てている50代の男性は10日分の仕事を一気にキャンセルされたことがある。急きょ別の仕事を探したが、その月の収入は激減。こうした経験から「不安定なスキマバイトと生活保護の相性はよくないでしょうね」と指摘する。

生活保護の理想の“ゴール”のひとつは、アパートに入り、安定した仕事を見つけ、自立して地域に定着する――、というものだ。しかし、「就労意欲は高いけど不安定な仕事しかない人たち」にとってはこのゴールは当てはまらない。

一方、この「就労意欲」が果たして本心なのかという疑問もある。稼働年齢層は中でも生活保護への忌避感が強い。SNSなどには生活保護利用者へのデマやバッシングがあふれる。もしこうした“世論”がスティグマ(社会的恥辱感)を植え付け、腰を据えて仕事を探す機会を奪っているのだとしたら、一部のSNS利用者たちの責任も見逃せない。