「働きたいけど不安定な人」が制度のはざまに
「生活保護を利用することでかえって金銭管理が難しくなって『詰んでしまう』人が、相談者の中にもいます」と佐々木さんは話す。
しかし、関連する法令や通知をまとめた「生活保護手帳」には、廃止の目安として「6カ月を超えて保護を要しない状態が継続すると認められるとき」などの記載がある。廃止の際は半年ほど様子を見てから、という趣旨だ。スキマバイトで短期的に収入が増えたからといって保護が廃止されることがあるのだろうか。
これに対し佐々木さんは「半年という“原則”はありますが、『働きたい』『保護をやめたい』という人を、ケースワーカーが『働くな』『やめるな』と強く言うことも難しい。不安定な仕事の収入が2、3カ月あっただけで廃止になった人は、わりといます。本人たちもそれでいいと思ってるんですよね」としたうえで、次のように結論付ける。
「就労意欲は高いけど不安定な仕事しかない人たちと、生活保護制度の間にミスマッチが起きています」
アプリ登録者数はコロナ禍を境に急増
佐々木さんの話を裏付けるように別の支援団体のスタッフは「以前は不安定就労の人は、ケースワーカーが半年ほど様子を見たり、安定した仕事に就けるよう指導したりするのが一般的でしたが、コロナ禍以降、不安定な仕事でも、短期間で廃止になる人が増えました」と打ち明ける。
私の取材実感でもコロナ禍ごろから、支援団体のスタッフが稼働年齢層の生活保護利用者に「焦って働かないで」などと声をかける姿を見かける機会が増えた。彼らは不安定でもとにかく働こうとする。その結果、保護費が減額されてやりくりができなくなるケースが相次いだからだ。
一方で不安定雇用の象徴ともいえるスキマバイトのワーカーはコロナ禍を境に急増している。アプリ事業者らでつくる一般社団法人「スポットワーク協会」によると、2019年に約330万人だったアプリの延べ登録者数は、2025年10月には約3800万人に達した。目の前に手軽な選択肢があるのだ。1日も早く生活保護をやめたい人が日払いの仕事に飛びついて「詰み状態」になることと、スキマバイトの急拡大は無縁ではあるまい。