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娘婿が継ぐと総資産利益率が高い、という研究

 大塚家具のような、一族が支配する「同族企業」と聞くと、ワンマンの当代にボンボン息子とバカ娘の宴のような会社を想像してしまうが、実際はどうか。京都産業大の准教授・沈政郁らによる同族企業の研究が有名で、1986年から2011年までの同族企業と非同族企業のROA(総資産利益率)や売上高成長率を比較。するとどちらも非同族企業が上回っていることを明らかにしている(注4)。

 またリーマンショックなどの危機的な局面でも、同族企業は雇用を維持する傾向にあるという(注5)。田中角栄のファミリービジネスを継いだ娘・田中真紀子の「人間には敵か、家族か、使用人の3種類しかいない」みたいな扱いをするのかと思いきや、である。

 では、跡目継承は誰にするのがいいのか。面白いことに娘婿が継いだ場合がもっともROAが高いと沈准教授は指摘し、「婿養子はいわば『新しい息子』を入れる仕組み」でバカ息子対策になるのだという(注4)。娘婿というと「マスオさん」(実際は妻の親と同居するだけで養子ではないのだが)で気弱で頭が上がらないイメージをもってしまうが、実業の世界では違った。代表例が軽自動車のスズキである。2・3・4代目が娘婿社長で、名物会長の鈴木修(4代目社長)も娘婿である。

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スズキの鈴木修会長 ©共同通信社

「理」の娘に、父は今どう映っているのか

 大塚家具のように娘が継ぐ会社はどうか。有名どころでホッピーの製造元の3代目・石渡美奈。「2代目は創業を支えた古参たちとのしがらみに縛られる。だが、3代目ならば、しがらみを振り切り、大ナタを振るうことができる」(注6)との期待を受け、古い慣習を断ち切り、今にあった商品開発で売上を伸ばす。あるいはダイヤ精機の二代目・諏訪貴子は主婦から社長となって会社を継ぎ、「町工場の星」と呼ばれ、テレビドラマにまでなっている。

 いっぽう大塚父娘はといえば、テレビドラマにならないかわりに、「リア王」さながらの悲劇を演じる。「知るに相違ない。恩義を知らぬ子を持つことが、毒蛇の牙よりも鋭く親の心をさいなむことを!」(安西徹雄訳)。そんなふうに恩着せがましいリア王のごとく、娘の不義にいらだちながらも、助けを求めてきてくれることを父は待っている。

「やっぱり創業者と継ぐ人とは違うね」(注1)と腐し、「大塚家具の株も全部売ってしまった」(注1)と未練もない素振りを見せるが、アドバイスしたい気まんまんである。「理」の久美子からしたら、その目には彼はどのように映るだろうか。父か、先代か、あるいは1株も持たないただのひとか。

久美子社長は何を思うか ©AFLO

(注1)朝日新聞2018年8月5日朝刊
(注2)週刊東洋経済編集部『大塚家具 父と娘の泥仕合』東洋経済新報社2015年
(注3)週刊文春2015年4月2日号
(注4)中沢康彦『あの同族企業はなぜすごい』日本経済新聞社2017年
(注5)週刊ダイヤモンド 2018年4月14日号
(注6)AERA 2014年6月2日号