小学校に入学し、少し背が伸びたわが子。「もう小学生だから」とチャイルドシートを卒業させ、そのまま後部座席に座らせてシートベルトを締める。つい最近まで、「ごく普通のこと」と広く信じられてきた行為である。

 しかし、法的にも社会通念的にも問題のないはずのこの状態が、事故の瞬間に子どもの命を奪うことがある。法律が定める「6歳」という年齢のラインと、実際に座席の上で安全性が確保できる体格との間には、大きなギャップがあるからだ。

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「適法状態」でも守れなかった命

 2024年から2025年にかけて、このギャップを象徴する痛ましい事故が相次いだ。

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 2024年8月には、福岡市で軽乗用車が路線バスと正面衝突を起こし、後部座席に座っていた7歳と5歳の姉妹が死亡した。

 事故の際、姉妹はチャイルドシートを使用せず、直接座席に座ってシートベルトを装着していた。死因は、衝突の衝撃でベルトが腹部に強く食い込んだことによる出血性ショックである。

 さらに2025年10月、東京都青梅市で乗用車が電柱に衝突し、乗員5名のうち、後部座席の中央に座っていた8歳の男児が意識不明で救急搬送され、その後死亡が確認された。この男児もまた、事故当時チャイルドシートなどを使わずシートベルトを装着していたことが確認されている。

 これらの事故に共通するのは、「7、8歳の子が通常の座席でシートベルトを着用する」という「適法状態」にもかかわらず、命を落としてしまったことである。

“法律の規定”と“メーカー側の設計基準”のズレ

 こうした悲劇の根本的な原因は、子どもの安全な着座状況をめぐる法律の規定と、メーカー側の設計基準がズレていることにある。道路交通法がチャイルドシートを義務づけているのは「6歳未満」だが、これはあくまで行政上の区分に過ぎない。

 文部科学省の学校保健統計調査(令和6年度)によれば、6歳児の平均身長は男女ともに115cm前後。これに対し、自動車メーカーがシートベルトの設計において想定する「もっとも小柄な乗員」の身長は、基本的に140cmから150cm程度であり、これはおおむね11歳~12歳頃の平均身長に相当する。

 つまり、6歳でチャイルドシートを卒業してしまうと、そこから約6年間にわたり、子どもたちは「身体に合わない拘束装置」で身を守らなければならないことになる。