信号待ちで目の前に止まったミニバンの窓から、車内を歩き回る子どもの影……。年々チャイルドシートの装着率は上昇しているとはいえ、今でもこうした「不安な光景」がなくなることはない。
警察庁の統計によれば、チャイルドシートを適正に使用していた場合に比べ、非装着あるいは不適切使用時の致死率は5.6倍にもなる。これだけ明白な危険があるのに、なぜチャイルドシートをしない保護者が散見されるのか。
チャイルドシートの装着状況に関するデータや実際の事例を見ていくと、「親の怠慢」という問題だけでは片付けられない背景が見えてきた。
チャイルドシート「できていない保護者」が半分以上?
まずそもそも、チャイルドシートを正しく装着できていない保護者はどれだけいるのだろうか。警察庁とJAFによる2025年の全国調査によれば、チャイルドシートの使用率は82.4%を記録している。
しかし、この数字は「8割の保護者が子どもを安全に座らせている」ことを意味するわけではない。同調査で行われた「着座状況調査(子どもを正しく座らせ、拘束できているか)」の結果を見ると、ハーネスの締めつけ不足など、安全性能を発揮できない「ミスユース」の状態が44.4%にも上っている。
つまり、チャイルドシートをしている保護者は8割いるが、しっかりと子どもを固定できているのはそのうち5割強しかいないのだ。そもそもチャイルドシートをしていない保護者が2割いることを考えると、全体として半分以上の子どもが危険な状態で車に乗っていることになる。
なおミスユースの内容として、もっとも多いのが「ハーネスの締めつけ不適正」である。「キツく拘束すると子どもが嫌がる」「ギリギリまで締めると厚着のときに装着しにくい」といった背景が想定される。
せわしない育児のなか、何度もチャイルドシートの装着を繰り返していると、どうしても「いつもこうしているし、大丈夫だろう」といった妥協が生まれやすい。
この「大丈夫だろう」が積み重なるうちに、チャイルドシートの装着そのものを放棄してしまう例もあるようだ。
