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――中国に対して、日本の財界はどのように対応しているのでしょうか。

新浪 中国は、細かいすり合わせが必要なモノづくりは苦手です。どうしても短い時間でモノをつくろうとする傾向がある。今、中国は「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」を掲げ、2049年の建国100周年までに「世界の製造大国」としての地位を築くことを目標にデジタル分野の強化を図っています。しかし、AIや3Dプリンタで全部モノづくりができるというわけではない。やはり細やかなノウハウがなければモノづくりはできません。

©AFLO

 日本の財界は中国に対して大きな関心を持っています。今は様々な側面から関係性をより深く探っていこうとしています。

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――経団連を始めとした国内の財界の動きはいかがですか。

©鈴木七絵/文藝春秋

新浪 現在、財界から必要なメッセージは政権に流しているし、政権が必要だとするものに対しても対応しようとしていると思います。

 その結果、この5年間、安倍政権そのものを支えることが、まさに重厚長大産業の伸びにつながったわけです。安倍総理も自ら外交に乗り出し、様々な国との関係性が非常にうまくいくようになり、重厚長大産業には大きなメリットをもたらしたと思います。経団連を始め、経済同友会も、技術革新の荒波に対して、自分たちが変わらなければならないという認識を強くし始めています。

STEM人材をいかに日本に呼び込むか

――では、アメリカの産業界が力を入れている知財やデータについての日本の取組みはいかがですか。

新浪 これからです。例えば、政府が提唱する「ソサエティー5.0」はまさにデジタライゼーションを前提としています。いわゆる、ITの力を使ってイノベーションを起こす「デジタルトランスフォーメーション」は今、産業界の大きなトレンドです。

 しかし、それらを進めるためには、労働の流動性を高めたり、イノベイティブな人たちを育成したりする必要があります。例えば、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Math)の4分野の頭文字を取って使われる「STEM人材」の不足をいかに解決していくのか。AIなど最先端の分野には、このSTEM人材が必ず必要です。こうした人材を海外から呼ぶにしても、日本は果たして彼らに選ばれる国になっているのか。そうした人材を呼び込むための基盤づくりもこれからの緊急の課題です。

 アメリカが移民政策を巡って、外国人のビザ取得を厳格化している今、海外のSTEM人材は日本に目を向けています。実際、インド人のITエンジニアも日本に来ています。今こそ、海外から日本にSTEM人材を呼び込むチャンスなのです。

――実際、日本のITベンチャーも、インド人エンジニアの採用を加速させています。

新浪 だからこそ、もっとスピーディーに呼び込む仕組みをつくる必要があります。むろん国内でも大学改革をして、STEM人材の育成を強化しなければなりません。小中学校からプログラミング教育を行ったり、海外の技術をより早く学ぶために英語を勉強したり、教育改革をもっと早く進める必要があるでしょう。

取材・構成=國貞文隆