しかし2009年2月16日、トラビスは突如として凶暴化する。サンドラの友人であるチャーラ・ナッシュ(当時55歳)を襲ったのだ。サンドラはナッシュを助けようと、シャベルでトラビスを殴り、肉切り包丁で刺したが、トラビスの攻撃を止められなかった。悲惨な襲撃は12分間続き、911に通報したサンドラは「彼が…彼女を…食べ始めた…」と泣きながら告げた。

「両目は失明」「顔の大半を失う」ことに

 駆けつけた警官はついにトラビスを射殺するが、現場は惨憺たるものだった。ナッシュは両手、鼻、両目、唇、顔の中心骨格を失った。その状態は医師をも驚愕させるほどの重傷だった。

2009年、チンパンジーに襲われたナッシュさん ©getty

ADVERTISEMENT

 事件の後、ナッシュは数々の手術を受けた。スタンフォード大学での7時間に及ぶ外科手術、クリーブランド・クリニックでの顔面移植手術、そして2011年には両手の移植手術も受けている。これらの手術は成功したものの、ナッシュは臓器拒絶反応を防ぐための投薬と、機能回復のためのリハビリを生涯続けなければならなくなった。