「愛する家族(ペット)の何かがおかしい」――。
本日2月20日公開の映画『おさるのベン』は、そんな不穏な違和感から始まる。
物語の舞台は、森に佇む高級別荘地。大学生ルーシーは友人とともに帰省し、家族、そして幼い頃から一緒に育ったチンパンジーの“ベン”との再会を喜ぶ。プール、パーティー、気ままな休暇。完璧なはずの時間だった。だが――いつもは賢く愛らしいベンの様子が、どこかおかしい。
公開されている予告映像では、かつて家族同然だったベンから必死に逃げるルーシーたちの姿が映し出される。なぜ彼は凶暴化したのか。その答えは劇場で明かされる。
しかし、こうした出来事は決してフィクションだけの話ではない。
2009年、アメリカで衝撃的な事件が起きた。
友人宅を訪れた女性が、飼育されていたチンパンジーに突如襲われ、顔や手に壊滅的な損傷を負ったのだ。全米を驚かせた「チンパンジー襲撃事件」の衝撃的な内容を、文庫新刊『映画になった恐怖の実話Ⅲ』(鉄人社)のダイジェスト版からお届けしたい。
「彼女を…食べ始めた…」
「彼が…彼女を…食べ始めた…」。2009年、米国コネチカット州で人気チンパンジーのトラビスが飼い主の友人を襲い、彼女の顔のほとんどを失わせる惨事が起きた。
12分間にわたる凄惨な襲撃は、被害者チャーラ・ナッシュに取り返しのつかない傷を負わせた。事件から10数年、ナッシュはどのような人生を歩んだのだろうか。
トラビス(当時14歳)は、飼い主のサンドラ(当時70歳)から深く愛されていた雄のチンパンジーだった。地元では警官にも挨拶する人気者で、テレビやCMにも出演するほどの知名度を誇っていた。鍵を使って玄関のドアを開け、自分で着替えをし、テーブルで食事をするなど、驚くべき知能の持ち主でもあった。
