こうした条件の上で、十分に学校に行けなかったり、さまざまな問題を抱えたりする。この部長の場合でも、10代から風俗のボーイとして複数店舗で働いていた。しかし店舗が本番行為で摘発され、留置場でたまたま一緒になった中国系のヤクザに誘われたのだという。

「平凡で幸せな家庭」を望む詐欺師たち

 生育環境から良好な教育や人間関係を得られなかったり、犯罪歴があったりすると、堅気の仕事への再就職は難しい。しかし本人は頭が良く、お金を稼いでちゃんとした暮らしをしたい。安田氏によれば、こうした人々の夢は「平凡で幸せな家庭」だったりするという。単に億万長者になりたいというより、「どこかで幸せを求める」人も多いのだ。

 しかし一般の人の暮らしに行くには、「何か悪いことをしなければ、この状況から抜け出せない」。だから「思い切って決断した」と部長は語ったという。騙されて行った人もいるが、彼は腹を決めて、自分の意思で行ったのだ。

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 実際、部長曰く「詐欺は人間力が重要なので、騙されて連れてこられた者はモチベーションが低く、使い物になりません」という。主体的に向こうへ行った人の方が、詐欺の担い手としては優秀なのだ。

AV男優が騙されて売られた例も

 一方で、騙されて詐欺拠点に送り込まれる人々もいる。海外風俗出稼ぎと言われてタイやカンボジアの店で働くが、客がつかなかったり、現地の雇用段階で「これは使えない」となったりすると、パークに売られる。詐欺に従事せざるを得なくなるのだ。

 

 安田氏が聞いて驚いたのは、AV男優が騙されて売られてきた例だ。「タイで撮影がある」と言われて来させられ、そのまま車に乗せられて詐欺パークにやってきたという。売れない男優が、こうして詐欺の世界に引き込まれていく。

 カンボジアの詐欺パークは「完全に閉じられた空間」で、出入り口は完全封鎖されている。中にいる限り、外の世界との接触は絶たれる。そこでは「会社」と呼ばれる組織が、日々「売上」を追求し、「顧客」を騙し続けている。日本の特殊詐欺被害の半分以上が、こうした海外拠点から生まれているという現実が、安田氏の取材から浮かび上がった。

最初から記事を読む カンボジア“特殊詐欺集団”をまとめた「日本人部長」の告白――「日本で真面目に会社員ができる人であれば、高い売上を上げられる」