ミャンマーの廃墟と化した特殊詐欺拠点「順達(シュンダァ)園区」。台湾・新北市市議の林秉宥(リンビンヨウ)がそこで発見したのは、特殊詐欺師たちが生々しく書き残した肉筆のノートだった。

 ノートの執筆者たちは中国人で、チームのターゲットは30代以上の台湾人女性。だが、そこに記された手口を読み解くと、日本での被害事例と似ている点は多い。

台湾の婚活サイト『愛的小路』(愛の小路)。台湾でも婚活は盛んで「82年生まれのイケてる美女」と婚活エージェントがアピール。 ※画像と本文は関係ありません

 出会いからわずか10日間で“骨までしゃぶられる”――。ノートに記された、恐るべき「洗脳マニュアル」の内容とは?(全4回の4回目/最初から読む

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捏造エピソードでエモ共感

 以下、出会いから10日で、ロマンスを求める台湾人女性にカネを振り込ませるプロセスを追っていく(日付は原文ママ)。

【1~3日目】
 顧客の本名を把握。仕事や月収をそれとなく探り、おおよその経済状況や貯蓄の有無を判断。この段階で初期選別をおこなう。よい第一印象を残すことに全力を傾ける。

【3~5日目】
 自分と顧客が共感できる話題を語る。センスがある、趣味がいいと褒めまくり、彼女の趣味=自分の趣味というスタンスで、さらに情報を引き出す。これは彼女に将来の夢(=交際や結婚)を見せるための下地作りにもなる。子どものころの思い出を語り合い、共感を引き出すのもいい。必要があれば、当方のエピソードは捏造して構わない。

【5~6日目】
 仕事の悩みや困難を聞き、共感してストレスを和らげつつ合理的なアドバイスをする。相手に「成熟していて、落ち着きがあり、尊敬できる人」だと感じさせる。自分の(捏造した)仕事の話を混ぜ、投資商品への興味をさりげなく植え付ける。

 夜の落ち着いた時間に過去の恋愛の傷を語り合って共感し、自分の(捏造した)恋愛エピソードを共有して感激させる。

 マニュアルは、当方の理想の女性が「共に成長し、学び合い、励まし合える存在」であることを示し、こちらのペースに引き込む。相手に媚びるのは厳禁で、ときに軽く説教してもよい。相手に決して主導権を握らせない……とある。

女性に対するセリフを暗記するため、何度も同じ文言が書かれたページ。「この世で最も残念なのは、自分が気に入った人じゃなく、自分を大事に思ってくれる人を失うことだ」といった甘い泥名言も! 筆者撮影。

 ノートには乙女ゲーばりの甘いセリフや、自己啓発・スピリチュアル本に出てきそうな意識の高いセリフが、何度もコピペのように書かれている個所がいくつも見つかる。徹底的に表現を覚え込み、いつでもスルッと殺し文句が出るように訓練していたらしい。