7日目からの“刈り取りプロセス”

 相手のプライドを満足させつつ感情を操り、(詐欺への)投資を自己決定させるのだ。林秉宥によると、詐欺園区からは心理学の本も見つかったといい、ターゲットを徹底的に恋愛脳に洗脳するプロセスが共有されていたようである。十分に調教が完了すれば、あとは「刈り取り」だ。

【7~8日目】
 こちらに対する印象をそれとなく聞き、当方の好意を表明する。顧客に夢を見させる。家やクルマ、海外旅行、子どものより良い教育、興味関心を学ぶ環境づくりなど、人生設計の夢を語る。

【9~10日目】
 顧客を刈り取る。方法は3種。
(1)側面突破…これまでの会話の積み重ねのなかから、間接的にプラットフォームへ招待する。エモい感情や将来の夢の話から、自然で無理のない流れを目指す。
(2)正面突破…正面から専門知識や市場分析を出す。「私たちは共に学び、成長し、どんな生活を送りたいのか」という話をする。
(3)強行突破…(1)や(2)が効かなければ、従来の情報をもとに口論を仕掛けるなど最後の手段を尽くす。
 それでも無理なら切り捨てる。その顧客はターゲットではない。

 マニュアルはさらにこう書く。

崇拝させる: 自分が相手より博学で、財力も智力も高いことを見せつけ、尊敬と崇拝の念を抱かせろ。
師匠と弟子の関係: 恋愛感情が十分高まったら、「稼ぎ方を教える」という師弟関係に持ち込め。これが刈り取りの成功率を90%以上に引き上げる。
骨までしゃぶれ: 最初はあえて少額の利益を出させ、しっかり出金することで「ここは正規のプラットフォームだ」と信じ込ませろ。その後、ローンを組ませるなどして全ての資産を奪い尽くせ。

 もっとも、世の中は恐ろしい。台湾や中国には、この園区詐欺師に騙されたフリをして最初の出金だけを手に入れて(もしくは、園区労働者のスカウトにわざと引っかかって渡航前の当面の生活費を振り込ませて)からドロンする黒サギも存在する。

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園区内で発見された業務用スマホ。パソコンに接続して使用し、外すとデータがすべて消える。詐欺集団の社名「創億集団」は、昨年10月にアメリカなどの国際制裁を受けたプリンスグループの関連組織だという。筆者撮影。

 ノートには「詐欺師に注意!」「妙にノリがいい」「自分の個人情報を明かさない」などと、詐欺師自身による黒サギ警戒マニュアルも記されていたりしてカオスだ。中国国内の河南省・貴州省・海南省などの人は「詐欺師が多いから」(注:真偽不明)スカウト時に誘うなという文面もあり、詐欺集団から嫌がられる地域とはなんなんだと思えてくる。