カンボジアが今、国際的な特殊詐欺の一大拠点となっている。2024年には日本人の大量拘束が相次ぎ、その実態が明るみに出始めた。現地で詐欺組織の「部長」を務めた日本人男性への取材から、驚くべき組織の内実が浮かび上がる。紀実作家の安田峰俊氏が、その生々しい証言を語った。(全2回の1回目/続きを読む)
(初出:「文藝春秋PLUS」2026年1月14日配信)
根源を辿るとフンセン氏の一族につながる
2024年12月11日、カンボジア捜査当局は南部シアヌークビルで日本人16人を特殊詐欺の疑いで拘束した。10月には29人、11月には13人と、日本人の大量拘束が続いている。
安田氏によれば、カンボジアに限らずミャンマーも激しい拠点だという。「昨年の年始頃、ミャンマーのミャワディという町にある特殊詐欺拠点で、日本人の高校生が騙されて働かされているというニュースが大きく報じられました」。ただし、ミャンマーは内戦状態にあり摘発が困難なため、カンボジアの方が日本人の拘束例が多く報道されているのだという。
カンボジアの特殊詐欺拠点は、中国か台湾のマフィアが経営している。しかし土地を提供しているのは地元の有力者だ。「その根源を辿っていくと、フン・セン氏の一族や腹心といった人物が平気でつながってきます」と安田氏は明かす。カンボジアのGDPの2割から3割が特殊詐欺で稼がれているという凄まじい状況があり、「国家ぐるみ」なのだ。
「部長」を務めていた日本人に接触
安田氏が接触した日本人は、大量拘束された拠点のいずれかで「部長」を務めていた人物だ。詐欺拠点の構造について、安田氏は分かりやすい比喩で説明する。
「日本にある木更津や御殿場のアウトレットモールを想像してください。あれが『詐欺パーク』です」。パーク自体は中国や台湾のマフィアが運営し、その中に1個1個のテナントが入っている。「アウトレットで店舗にあたる、そのひとつひとつの建物が詐欺拠点と呼ばれる場所です」。
パーク丸ごとを日本人が持っているわけではない。1テナントの店長クラスが日本人で、従業員が日本人という日本人向けの拠点があるのだ。この部長は3年間で被害金額50億円を稼ぎ出し、あまりに電話が上手なため、他の日本人チームに教えに行く「先生」役も務めていたという。

