もうすぐアジア大会が始まり、東京五輪に向け、森保一監督が指揮するU-21日本代表が始動する。自国開催の五輪では、メキシコ五輪以来52年ぶりのメダル獲得が目標になるが、東京五輪を戦うチームのOA枠に本田圭佑が名乗りを上げ、武藤嘉紀や香川真司らも興味を持っているという。
西野監督、反町監督はOA枠を使わず
W杯に出場した選手が「なぜ、今さら五輪に」と不思議に思うところだが、OAとはいったいどういうものなのか理解しておく必要がある。
オリンピックに出場するチームは23歳以下の選手で構成(U-23日本代表)されるが、OAはオーバーエイジの略称で24歳以上の選手を3名、チームに登録することが可能になる制度だ。OAとして起用されるのは、そのチームのウィークポイントを補い、チーム力アップを実現できる選手である。
過去の五輪代表のOA枠は、こうなっている。
●アトランタ五輪:OA枠採用なし(西野朗監督)グループリーグ敗退
●シドニー五輪:三浦淳宏、楢崎正剛、森岡隆三(トルシエ監督)ベスト8
●アテネ五輪:小野伸二、曽ヶ端準(山本昌邦監督)グループリーグ敗退
●北京五輪:OA枠採用なし(反町康治監督)グループリーグ敗退
●ロンドン五輪:吉田麻也、徳永悠平(関塚隆監督)ベスト4
●リオ五輪:興梠慎三、塩谷司、藤春廣輝(手倉森誠監督)グループリーグ敗退
西野監督、反町監督は同世代の連携とチームの完成度に自信を持ち、OA枠をあえて使用しなかった。
楢崎加入が成功したシドニー五輪
OA枠をうまく活かしてチーム力を上げ、結果を出したのはシドニー五輪とロンドン五輪である。シドニー五輪のチームは、中田英寿、宮本恒靖、中村俊輔を始め稲本潤一ら黄金世代が中心となるタレント軍団だった。だが、GKが最大のウィークポイントになり、楢崎正剛をOA枠で登録した。フラット3の最後尾を守り、守備を安定させ、準々決勝のアメリカ戦でPK戦で敗れたもののベスト8入りに大きく貢献した。
ロンドン五輪も最終ラインの守備に弱点があり、23歳以下の選手に1歳違いと年齢的にも近い吉田をセンターバックに起用し、さらに左サイドバックに徳永を配した。2人の加入で最終ラインが安定すると全体に堅固な守備網が完成し、ベスト4進出の大きな要因になった。吉田はキャプテンにもなったが、そのキャラクター、プレーがチームにフィットし、結果を出した成功例となった。
天才・小野伸二は機能せず
アテネ五輪の時は、天才・小野を起用した。
小野の加入でチームの攻撃力は格段アップし、チーム力は上がるだろうと思われた。しかし、蓋を開けてみると小野依存症が顕著になって自分たちでやろうという意識が気薄になってしまった。これは小野が悪いわけではなく、チームの個性や選手の性格をよく理解していたはずの山本監督のミスチョイスだった。経験のない若い選手の中にスキルが非常に高く、経験がある選手が中盤に入れば、どうしても若い選手はその選手を見てしまう。良薬が毒にもなってしまうというパターンである。
リオ五輪の時は、ベテランの興梠がFWとして攻撃陣をリードしたものの、塩谷と藤春ともにミスが多く、なかなかチームにフィットしなかった。手倉森監督の見極めが出来ていなかったためだが、彼らはOAとしての期待に応えられず、結果につながらなかった。