ミラノ・コルティナ冬季五輪では、金メダルを獲得した“りくりゅう”ペアの活躍を通じて、日本フィギュアスケート勢に注目が集まっています。
そこで、過去に「文藝春秋」に掲載されたレジェンド選手の肉声記事から、一部を抜粋して紹介します。今回は、プロフィギュアスケーターの安藤美姫さんが胸中を語った記事です(掲載:「文藝春秋」2013年10月号、取材・構成:青嶋ひろの)。
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荒川静香さんの言葉
スケーター仲間では、一番多くのことを学ばせてもらってきて、とても信頼できるのは、荒川静香さん。小さな時からずっと私の面倒を見てくれて、ほんとうに頼りになる、お姉さんみたいな人です。ちょっと連絡を取らない時期があったとしても、振り返ればトリノ五輪のころも、今年、ジャンプで苦しんでいた時期も、節目節目で彼女はいてくれた。そばにいてくれて、助けてくれて、スケートのこともプライベートのことも話を聞いてくれて、そしていつでも、「普通」に接してくれる。
荒川さんはいつも、ちょっとしたキーワード、私の心にキーとして残るようなことを言ってくれます。「とにかく悔いを残すな」とか、「美姫の人生なんだから、美姫自身が決めなさい」とか……。今シーズンも「最後に決めるのは美姫自身だよ。でも、時間が解決してくれることもあるし、今、そんなに悩みすぎなくたっていい。きっといろいろなことが起こるよ。今までだって、たくさんのことがあったでしょう? でも、今になってみれば笑える出来事だって、思い出してみると多いよね」なんていうふうに。彼女もきっと、そんなふうに生きてきたんでしょうね。
そう、私のスケート人生。シーズン前の今の時点でも、私はアマチュア選手として、もうやり残したことは何も無い、と思っています。10―11年シーズン、震災直後の世界選手権で2度目の優勝ができた年。フリーの後半、一番疲れている2分間で5つのジャンプを跳ぶという、誰もやったことのないチャレンジを達成することができました。
その結果、優勝したことももちろん嬉しかったけれど、それ以上にあの1年は、自分の決めた目標に向かって、一日一日の過ごし方、一つ一つの試合への調整の仕方、戦い方、自分との向き合い方、みんなに見せることができた演技……すべてに納得ができたんです。本当に自分が描いたとおりの1年。ああ、自分の納得のいく現役選手の姿は、これだったのか、って……あの時は思うことができたんです。




