※参考:かんぽ生命保険契約問題特別調査委員会「調査報告書」2019年12月18日

ルール設計を誤れば、誰もが犯罪者になりうる

このケースを振り返ると、制度や評価のルールの設計を誤ると、普通の人でも合理的に不正に誘導されることがわかる。

不正に関わったのは“通常は誠実に職務を果たしている人”たちである。彼らを逸脱行為に走らせたのは、倫理感の欠如ではなく、ルールが生み出した「合理的な行動選択」であった。

ADVERTISEMENT

再発防止のためには、

・組織全体で共有する善悪基準の明確化
・長期・短期の双方に照らした適切な業績評価ルールの策定
・透明性確保とリアルタイム監査の導入
・問題行為に対する確実な懲罰の仕組み

などが必要である。

とりわけ重要なのは、業績評価ルールの設計である。評価の設計を誤れば、不正は必ず起こる。経営陣や幹部は、ルールづくりを単なる管理業務ではなく、組織を守る最重要経営判断と認識すべきである。

ルールは人を守る盾にも、足を踏み外させる坂道にもなる。守れば報われるルールをつくれば、人は健全に振る舞う可能性が高まる。逆に、ルール設計を誤れば、誰もが犯罪者になりうる。ここで示した事例は、その厳粛な事実を突きつけている。

秋山 進(あきやま・すすむ)
プリンシプル・コンサルティング・グループ代表取締役
リスクマネジメントコンサルタント。京都大学卒業後、リクルート入社。社長室からスタートし、事業企画・商品企画などを担当。独立後、活動領域をリスクマネジメントに移し、産業再生機構下で再建中であったカネボウ化粧品CCO代行、上場企業の社外取締役や社外監査役、日米合弁企業の執行役員、財団法人の理事、学校法人の監事、NPOの理事長など、多様な組織形態の経営にかかわる業務を遂行する。現在は、リスク管理委員会やコンプライアンス委員会のアドバイザー、ガバナンスやコンプライアンスに関する講演や研修を行っている。著書に、『社長! それは「法律」問題です』(共著、日本経済新聞出版、2002年)、『職場の「やりづらい人」を動かす技術』(KADOKAWA、2018年)、『これだけは知っておきたいコンプライアンスの基本24のケース』(日本能率協会マネジメントセンター、2020年)、『転職1年目の教科書』(日本能率協会マネジメントセンター、2021年)ほか著書多数。
次のページ 写真ページはこちら