不正が常態化・正当化し、違法行為に発展
このような営業評価ルールのもとで、現場はどのように反応したのか。代表的なのは次の2つの不適切行為である。
① 二重徴収:既存契約を解約せずに新契約を追加し、保険料を6カ月間二重に徴収することで新規契約扱いを維持する。
② 無保険期間の創出:旧契約解約から新契約加入まで3カ月以上空けることで、新規契約扱いを得る。
いずれも、顧客利益を犠牲にして営業成績を稼ぐ手法であった。
そして、このように不正が常態化し正当化されると、さらに重大な違法行為に発展する。
報道などによると、
・顧客に無断で申込書を作成・提出し、後から事情を説明すれば許されると考えた(私文書偽造の可能性)
・契約時に顧客が通院事実を申告したにもかかわらず、契約成立を優先して告知書に記載しないよう促した(不告知教唆)
・契約者本人に会わず、親族の書類だけで契約を成立させた(重要事項不告知)
などである。
こうした行為は最終的に、1万2836件もの「法令または社内規則違反の疑い」として募集人調査の対象となったのである。
制度設計の段階で予測できたこと
もちろん、実際に不適切行為を行った郵便局員は責任を問われるべきである。しかし、このような営業評価指標を設定すれば、どのような逸脱行為(場合によっては違法行為)が発生しうるかは、制度設計段階で予測できたはずだ。
制度策定側は、「多少の逸脱は避けられないが、営業の勢いをつけるためにはやむを得ない」と考えた可能性もあれば、単純に現場の実情を把握しておらず、このルールで正当な新規営業が進むと信じた可能性もある。いずれにせよ、制度導入前に営業担当者へのヒアリングや現場検証を行っていれば、問題発生は容易に想定できたと考えるほうが自然である。
制度設計者が現場に違法行為をさせる意図を持っていたわけではないにせよ、すでに8割の国民が生命保険に加入している市場環境下でこのような評価ルールを導入するのは、極めてリスキーだったと考えられる。