落語界で師匠が弟子にネタを教えるのも、弟子の「生き残り」を助ける「植福」(将来のために、そして社会全体の「福」のために、善い行いをし、幸福の種を蒔いておく、という意味)であり、「割り勘」なんですな。そしてその弟子が成長すれば、一門全体が「生き残る」力が増すわけです。
自分軸がないから、他人と比べたくなる
いやはや、古典落語や「亀の子たわし」のように、自己主張しないで何気なく存在しているものって、実はすごいんですよね。
さて、この「割り勘思考」を実践し、「生き残っていく」ために、どうしても乗り越えなければならない、現代人が抱える大きな病理があるのではないかと、私は常々感じております。それは、「人と比べる」というメンタリティですな。
振り返れば、高度経済成長期、日本では「隣の家に負けるな」「同期より出世しろ」「よそより良い学校に入れ」と、盛んに「人と比べる」ことが奨励されました。それが猛烈なエネルギーとなり、国全体が豊かになる原動力になった側面も、確かにあったのでしょう。
かくいう私も、中3の夏休みに何をとち狂ったか、いきなり「開成高校を受ける!」と宣言したことがありました。結果はもちろん不合格で、彼我(ひが)の差を痛感したものでした。
それが「比べまくり」の人生の幕開けでもありました。
あれから四十数年。時代はがらりと変わりました。あの頃のような、皆が同じ目標に向かって一直線に進む時代ではありません。価値観は多様化し、幸せの形も人それぞれです。
それなのに、いまだに私たちは、どこかで「人と比べる」ことから抜け出せずにいます。
会社の同僚と、学生時代の友人と、親戚と、そして今やSNSを見れば、顔も知らない誰かと、常に自分を比較してしまう。「あの人は自分よりお金を持っている」「あの人は自分より楽しそうに暮らしている」「あの人は自分より若く見える」。そこに「承認欲求」が絡んでくるから、より悩ましくもなってしまいます。