高齢になれば、男性のほとんどに発生する前立腺がん。発見が遅れれば、排尿障害や歩行障害など、QOLを著しく害する恐ろしい疾患である。老年科専門医で、名古屋学芸大学大学院栄養科学研究科の下方浩史教授が解説する、検査の正しい受診法から食習慣まで、前立腺がんを防ぐメソッドとは――。(初出:「週刊文春 電子版」2025年11月20日号)
ステージ1でも早期発見が可能なPSA検査を活用
まず、下方教授が重要性を強調するのが、(1)PSA検査の正しい活用法である。
「PSA検査は90年代から行われるようになった血液検査です。前立腺で産生される前立腺特異抗原(PSA)というたんぱく質の数値を測定し、前立腺がんの可能性を調べる腫瘍マーカー検査となります。
他のがんの腫瘍マーカー検査で見つかるのは進行がんですが、PSA検査は非常に感度が高く、ステージ1でも早期発見することができる。90年代以降、罹患者数が急増したのもこのため。前立腺がんの早期治療には非常に役立つと言っていいでしょう」
検査の結果、PSA値が4ng/ml未満なら正常値とされる(以下、単位は省略)。
「PSAの値は4以上から前立腺がんの疑いがあります。ただし、前立腺炎や前立腺肥大の可能性もあるため、PSA値が4〜10の場合には、直腸診などの2次検査、さらに経直腸エコーなどの3次検査に進みます。ここで陰性と診断されれば、定期的な検査受診を命じられます」
たとえ陽性と診断された場合でも、「自分はがん患者だ」と無暗に落ち込む必要はないという。
「病理解剖では、80歳以上の男性の8割前後に潜在的な前立腺がんが見つかったとの報告もあります。つまり、年を取ればすべての男性にリスクがあるということ。ただし、乳がんなどと違って進行が非常に遅く、初期では生存率も高く、腫瘍の存在に気づかず老衰を迎える人も沢山いるのが特徴です。そのため、前立腺がんでは陽性の場合でも、腫瘍の悪性度と、年齢に応じて、経過観察も含め、治療方法を慎重に見極めていきます」
一方、PSAが11以上の場合には進行がんの可能性が高い。