「死体は樹海に捨てろ」――社長の一言で、事件は隠蔽へと動き出した。だが1年半後、沈黙を破った同僚の証言から真相が発覚する。41歳男性はなぜ死に追い込まれたのか。平成24年の凶悪事件、その結末を追う。なお登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/最初から読む)
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同僚を殺してしまった男
野本が林に電話をかけ、「中井を殺してしまった」と報告。武田は「警察に自首する」と訴えたが、林に怒鳴りつけられた。
「バカ野郎、お前はそれがどれほど周囲に迷惑をかけるのか分かっているのか。お前の家族もタダでは済まない。何もなかったことにするんだ。死体は樹海に捨てろ。車は野本のものを使え。金は野本から受け取ればいい。まずコンビニへ行って軍手を用意しろ。アシがつかないように市外のコンビニまで買いに行け。店を閉めるわけにいかんから、お前1人でやるんだ!」
武田は命じられた通り、翌日未明に中井さんの遺体を樹海に運んだ。自殺に見せかけるため、中井さんの私服や手荷物などもその近くに置いておいた。その日の夕方、店に戻ると、何もなかったように働かされた。ピンサロ嬢たちには不信感を持たれたが、「中井は前の店でホステスたちにセクハラし、店の金を使い込んで叱責され、店を辞めることになった」と言ってごまかした。
「いいか、今後、中井の話をするのは禁止だぞ。特にお前たちの間で勝手に話をしたら罰金だ!」
ところがその後、武田は仕事でミスをする度、中井さんの話を持ち出されて、林に脅されるようになった。
