41歳男性の転職先で待ち受けていたのは「ヤクザ直営店」という地獄だった。ホステス集団逃亡の責任を押し付けられ、日常的な暴行の末に死亡。救急車より「社長報告」を優先させた異常な職場で何が起きていたのか。平成24年に起きた事件の「支配と恐怖」の実態を追う。なおプライバシー保護のため、登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/続きを読む

転職先の上司がヤクザだった男の悲劇…。写真はイメージ ©getty

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ヤクザ直営店で働くことになった41歳

 被害者の中井孝志さん(当時41)は専門学校卒業後、ファミレスや建築会社などで働いたが、いずれの職場も長続きせず、職を転々としていた。その間に結婚して一児をもうけたが、家賃すら払えない極貧の生活ぶりに相手の両親が激怒。娘と孫を連れ去ってしまい、離婚を申し渡された。

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 実家に戻った中井さんは、フィリピンパブにハマるようになり、フィリピン人の女性を2回ほど連れてきたこともあった。だが、そのために作った借金の督促に追われ、年老いた両親が必死で尻ぬぐいした。

「この年になって身ぐるみ剥がされて、本当に惨めだ。年金暮らしの私たちはもう余裕がない。いつまでもお前を助けてやれない。何とか自立しておくれ」

 中井さんは実家を出ていき、再び職を転々。最後に行き着いたのが多角経営の風俗店グループだった。志望の動機は「系列店にフィリピンパブがある」ということだけだった。

「お前、ここに来るということは他に行くところがないんだろ。だったら今日から働けばええ。住むところも食事も用意してやる」

 そこはヤクザの直営店。社長の林丈一郎(同43)が言うことは絶対だった。マネジャーの野本慶太(同50)は社長のイエスマンのような男だった。ボーイの武田広幸(同36)は後から入ってきたが、野本の手下のような男だった。中井さんはフィリピンパブに配属され、店内の清掃や客席案内を担当することになった。