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2018/08/16

「大企業の減少」で競争しなくなった

 ところが最近多くの大企業の雰囲気はちょっと違うようだ。日本の企業社会において競争が明らかに少なくなっているのだ。日本経済はこの20年ほどの間、ほとんど成長していない。そして世界経済の成長スピードからどんどん取り残されているのが日本だ。それでも国内には「人口減少が始まった」「高齢化が著しい」などといわれつつもいまだ1億2000万人もの人が住んでいるのが日本だ。この「中途半端な人口」が日本の企業社会を支えているのが現実だ。

 縮小していく需要に対して、多くの大企業が生き残るために合従連衡をすすめている。1980年代初めに13行もあった都市銀行はいまやみずほ、三井住友、三菱UFJの3つのメガバンクとりそな銀行に収斂してしまった。同じ動きは鉄鋼、商社、化学、電機、薬品などあらゆる業種に及んでいる。

危機意識のないメガバンクの行員

 業界の中の大企業が減少してしまうと何がおこるか。競争が少なくなるのだ。私は1983年に大学を卒業して大手都市銀行に入行し都内の支店に配属されたが、支店の周りにはライバル行がひしめいていて、ちょっと気を許すと他行に口座を奪われたり、融資を切り替えられたりの常時戦闘状態にあったことは新入行員でもよくわかった。

 ところが最近のメガバンクの行員と話していると驚くほど危機意識がない。融資の審査でも手続きでも時間がかかるどころか半端な業務知識しかないために平気で間違った書類を作成してくることには驚きを禁じ得ない。あたりまえである。マイペースに仕事をしても他行に仕事を奪われる可能性がほとんどないからである。

 しかも、私がいたころと変わって、休みは取り放題だ。残業はご法度なのでスケジュールが遅れていてもさしたる罪悪感もなく「手続きが間に合わないので来週にしてください」などと平気で宣う始末だ。

 そんな大企業ならパラダイスだ。学生の多くが大企業に憧れ入りたがる理由はよくわかる。大きな会社に入って毎日定時で働いて、給料はよくて、いろいろな特典がある。しかも昔のようなハラスメントはないのだ。

©iStock.com

「おじさん」にすらなれない学生たち

 でも就活生のみなさん。よく考えたほうが良い。あなたが入りたいと思っている会社でずっと働いてきた40代50代のおじさんたちの顔を。あきらめと達観の人生を過ごしたその顔を。それがあなたの数十年後の姿なのだということを。否、これからはそのおじさんにすらなれないあなたのことを。

 みんなでお手々繋いでお遊戯しながら一生をすごせるほど社会はあまいものじゃない。大企業の仕事のほとんどがロボットに代替えされていく時代がもう間近になる中、従来のホワイトカラーでもだめ、その上のクリエイティブ・クラスを目指さないかぎり企業社会での幸せは掴めないのだ。会社なんていうワッペンに拘るのではなく、自身の能力をどこで磨き上げるのか戦略的に仕事を選ばなければこれからの社会では圧倒的に「負け組」に落ち込んでいくのだ。残念ながらこれからの世の中で、大企業というレッテルが「勝ち組」を意味することはもはやないのだ。

 私は銀行をたった3年でやめた。外資系コンサルティング会社に行って3年半で仕事のノウハウを磨いた。自分のフィールドを不動産に定め、大手不動産会社で16年、不動産知識を万全に取得した。そして培ったノウハウをもって新興不動産会社でリート(不動産投資信託)を上場させた。そして独立起業した。長いようで短い35年間。別に大企業に一生居るなんていう選択に拘泥する必要なんてないことにそのうち気が付いた。たった一度の人生、よーく考えたほうが良い。

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