2019年春に卒業予定の大学生たちの就職活動が6月から始まっている。会社説明会はすでに3月から始まっているので、多くの学生が10月1日以降の会社内定式に向けて活動をしている。すでに内定や内々定をもらった学生たちの笑顔がニュースに取り上げられている一方で、酷暑の中、汗みどろになったリクルートスーツに身を固めて面接に赴く学生の姿も目につく。

一括採用で企業の色に染めていく

 今年の就職戦線は空前の人手不足を背景に「売り手市場」なのだそうだ。リーマンショック直後から東日本大震災にかけての就職氷河期に比べると就職活動は「天と地」の差だともいう。なんだか妙な話だ。日本はなぜこの新卒学生に対する一括採用を続けているのだろうか。人材の流動化が進み中途採用も当たり前のように行われているのに、企業側は相変わらず「新人君」たちを一括で採用して自らの企業色に染め上げていくことに何の疑問も感じていないのだ。

 さらに入社を希望してくる学生に対して多様性やらコミュニケーション力などという意味不明で大した能力でもないものを過剰に求める傾向は強まるばかりだ。

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「最初に入社する会社」で人生は決まらない

 学生のほうもたまったものではない。日本の場合、相変わらず最初に入社する会社の「ネーム」で人生が決まってしまうかのような大いなる誤解に惑わされて、就職エージェントやコンサルタントの怪しげな指導やご託宣に一生懸命お付き合いするのだ。またこうした活動をメディアも囃し立て、足を棒にして会社訪問する学生の姿をまるで初夏の風物詩のように取り上げている。

オーストラリアの学生は「充電期間」を満喫している

 外国であればこんな光景はまず見られない。会社の人材採用の門戸は常に開かれているからだ。米国では人の採用にあたって、出身地はおろか性別や年齢などを聞くのもご法度である。最近話題のLGBTや女子学生の採用枠の削減などもってのほかである。

 オーストラリアの学生は卒業するとその多くが慌てて就職することなく、東南アジアのリゾートに出かけ、自分の好きなことをしながら将来何を目指すのかじっくり考える充電期間を設けたうえで就職に臨むのが一般的だそうだ。

 それに引き換え、日本の学生は国や企業から勝手に取り決められた、人を雇う側に都合の良い一方的な採用方法を押し付けられて、思考停止になりながら右往左往しているのだ。これはもう企業人事部のエゴとしか思えない制度である。