顕著な「大企業志向」
最近の就活マーケットで顕著な傾向にあるのが学生の「大企業志向」だ。「売り手市場」であるはずの学生を対象としたリクルートワークス研究所の調べによれば、5000人以上の大企業を目指し、2019年春に卒業を予定している大学生、大学院生の数は13万8800人。この数は前年比で12%の増加である。人口減少時代なのに大企業を希望する大学生の数が増加したのには訳がある。大学進学率が年々伸びているからだ。文部科学省の調査によれば2017年度の大学進学率は52.6%(過年度卒を含む)と過去最高の数値となっている。ちなみに1980年代では40%弱程度であるから世の中大卒だらけなのである。つまり大卒なんて肩書はあまり意味がないのである。
一方で企業の求人状況といえば、従業員5000人以上の大企業の求人数は5万1400人。募集が増えたとはいえ前年比で5%の増加である。求人倍率は0.37倍にすぎない。これに対して従業員300人未満の中小企業の求人数46万2900人に対して希望者数がわずか4万6700人と約1割でしかないのが実情だ。
「楽しく仕事がしたい」学生たち
この人気格差はどこからくるのだろうか。巷で言われているのが「給与」「福利厚生」「休日」「残業」といった待遇面で大企業は中小企業に比べて圧倒的に有利であること、さらには「セクハラ」「パワハラ」などのハラスメントが大企業のほうがルール化されていて少ないと思われるなどの理由によるものである。
また別の理由として大企業のほうが「仕事のフィールドが広い」「やりがいのある仕事ができる」などといった理由を挙げる学生もいるが、最近の学生の志向で顕著なのが「楽しく仕事がしたい」というものだ。
「安定した仕事を楽しくやりたい」という考え方自体は昔からある。しかし、社会はそれほど単純にはできていない。社会人になればそこは厳しい競争社会である。企業も自らが生きるため業界の中で猛烈に競争する。企業内でも出世を目指して熾烈な競争を勝ち抜いていく。そしてその先に企業人としての幸せがあるとされてきた。