国内随一の“左利き専門店”として知られ、日本だけでなく海外からも注目される文具店がある。その名は菊屋浦上商事(神奈川県・相模原市)。文具店ながら、文房具だけでなく、急須や包丁、鎌など、100種類以上の左利きグッズを店頭に並べている。メーカー数社と左利き商品の充実を目的とした「レフティ21プロジェクト」の呼びかけ人も務める、代表の浦上裕生さん(42)にお話を伺った。
◆ ◆ ◆
左利きの人が普通のカッターを使うと危険な理由
ーー左利きは人口の1割いると言われていますが、左利き専門店は珍しいですね。
浦上 もともとは、左利き用の商品は扱っておらず、ごく普通の文具店でした。母が店主をしていたころ、市役所からポツポツと左利き用商品の注文を受けており、需要があることは知っていましたが、当時は問い合わせがあったら対応する程度でした。
93年頃でしょうか、当時中学生だった左利きの弟が、カッターを使って大怪我をしたんです。ごく普通のカッターでしたが、左利きの人が使うと、刃の切れる側が自分の方に向くので危険なんですよ。母は「お店では左利き用のカッターを扱っているのに、わが子には使わせていなかった」とショックを受けていました。そこで、「きっと他にも困っている人がいるはずだ。そういう人のために左利き専用コーナーを作ろう」と、本格的に左利き専用商品を集めるようになったんです。
「左利き用の鍵盤ハーモニカはありませんか?」
――どんな反響がありましたか。
浦上 予想以上に売れました。山梨や群馬、地方からも問い合わせが来るようになり、海外から買いに来てくれる人もいました。
反響が大きかったので、急須や包丁、鎌など文房具以外の商品も仕入れるようになりました。今では、さまざまな商品について左利き用がないか、問い合わせがあります。最近よくあるのが、小学生が音楽の授業で使う鍵盤ハーモニカ。残念ながらそういう商品はないのですが、問い合わせてもらうことで、左利きの人が困っていることが何か、気づかされることがあります。