稲垣吾郎さんが驚いたドイツ製の定規
――(商品を見て)私も左利きですが、左利き用のグッズがこんなにあるなんて知りませんでした。
浦上 左利きの人は、右利き中心の社会に慣れすぎてしまっていて、意外と気づいていないんですよね。実際に使うことで、その使いやすさを分かってもらえるんです。
先日、稲垣吾郎さんとラジオで対談したんですが、左利きの稲垣さんも、右利きのものにすっかり慣れているから、普段の生活で特に困らないと話していました。でも実際に使ってみると使いごこちが全然違うんですよ。
これは、稲垣さんに使ってもらったドイツ製の定規で、数字が右から左に書いてあるんですね。「線を引く」って言いますけど、左利きの人は定規を使うとき「線を押す」ようにして使っているんです。稲垣さんも「あれ!? こんなにやりやすいんだ!」って驚いていました。番組がちょうどSMAPの解散直後だったので、放送後はものすごい反響がありました。稲垣さんが使った定規はドイツから300本仕入れていたんですが、もうこれが最後です。稲垣さんはワインもお好きだと聞いていたので、左利き用のコルクの栓抜きなども見てもらいました。スクリューの部分が逆向きになっているんですよ。
「左手専用マウス」を開発中
――そういえば、私も左利きで普通の定規が使いにくく、透明な定規をさかさまにして使っていました。ボールペンのペン先が緩んだりしてしまうのも、左利きだからと気づいたのは大人になってからです。
浦上 ボールペンのぺン先は、時計回りに回すと解体されるように作られていますからね。最近では、左利きの方の要望を受けて、ボディを回さないと解体できないようになっているボールペンも増えてきたんですよ。
――なるほど、メーカーも改良しているんですね。
浦上 ところで、この店頭の中で、あったらいいのに、ないなと思うものはありませんか?
――うーん。なんでしょうか。
浦上 マウスです。いま、仲間の会社に試作品を作ってもらえるか打診しているところです。
これまでは、左利き用の商品を作って欲しいとメーカーに話してもなかなか興味を持ってもらえませんでした。作ってもらっても廃番になってしまう。店頭で並べて売るだけでなく、左利きの商品があることを知ってもらい、クラウドファンディングやSNSで盛り上げることで、メーカー側から作りたいと思ってもらえるような提案をしていきたいと思っています。例えば、左手でファスナーの開け閉めがしやすいジーンズの商品化も考えていますよ。
身近な人との「違い」を知ってもらえたら
――いま、浦上さんは文具メーカーのゼブラや、調理器具メーカーの「ののじ」など数社と一緒に左利きグッズを開発する「レフティ21プロジェクト」を呼びかけています。
浦上 2020年の東京五輪に向けて、日本の左利きグッズの豊かさを世界に知って欲しいですね。海外では、左利き用の万年筆があるくらいで、左利き用の商品は少ないんです。右利きの人も左利き用の商品を使って、左利きの人が普段どんな思いをしているのか気づいてもらえたら。「左利き」という切り口は、身近な人と人との違いを知るきっかけの一つになると思います。
写真=山元茂樹/文藝春秋