さらに、島田市内を流れる大井川にかかる木造歩道橋で、渡るのに橋銭を徴収していた蓬莱橋の橋番の男性の話では当日14時ごろ、若い男と少女が通りかかり橋銭を要求したところ、「後で払うから」とそのまま橋を渡っていったという。これが最後の目撃証言だ。

 似たような2人を見たという情報は他にも数件あったが、それらを総合すると、少女を連れていた男は「25、26歳の勤め人風」「ネズミ色の洋服」「頭髪は七三分け」で一致していた。このことから警察は久子ちゃんが男に連れ去られたものとみて周辺一帯の捜索を続ける。

最悪の結末

 事件は発覚から3日後の13日午前9時40分、最悪の結末を迎える。蓬莱橋を渡った対岸にある大井川南側の山林、通称「地獄沢」の雑木林で、久子ちゃんの絞殺死体が発見されたのだ。遺体はパンツ1枚、シュミーズで顔を覆われており、左胸部の傷、外陰部裂傷のため血まみれ。左頬にもカラスに突かれたと見られる無惨な傷が確認できた。

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 すぐに大井川の河原で遺体解剖が行われ、担当した静岡県警の監察医・鈴木完夫は、犯人はまず首を絞め、久子ちゃんが仮死状態になった後、性器に傷害を負わせ、被害者の胸部を凶器不明のもので打撃し殺害したものと鑑定。姦淫があったかどうかは不明とした。

 誘拐殺人事件と断定した静岡県警は島田署に捜査本部を設置。目撃者の情報をもとに似顔絵を作成、県内に配布し情報を募るとともに、当時、県内で少女暴行事件が頻発していたことから、地元の不良や猥褻常習者、ヒロポン中毒者、浮浪者、精神障害者を中心に約230人を取り調べたが、それぞれにアリバイがあり2ヶ月が経過しても犯人はあがらない。地元の新聞は早くも「迷宮入り」の言葉を用い、住民らは警察の無能ぶりに陰口を叩いた。