始まりは、新橋の旅館だった。宿泊客だったホンダ社員がこぼした「外国製ヘルメットへの不満」を聞いた旅館の主人は、自らヘルメット製造に乗り出す。アイルトン・セナやミハエル・シューマッハなど超一流レーサーと契約を結び栄華を極めたが 、ワンマン経営と過剰在庫によりあえなく倒産。しかし――。

 絶望の淵から泥臭い現場改革を断行し、“借金ゼロ”の超優良企業へと生まれ変わった「奇跡のV字回復」の全貌とは? 4000社以上の企業を取材してきた著者が、小規模なマーケットで圧倒的な世界シェアを誇る50の企業を大解剖した『世界シェアNo.1のすごい日本企業』(田宮寛之著、プレジデント社)より一部を抜粋して紹介する。

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世界60カ国以上に販売網を展開

 世界のバイク用高級ヘルメット市場で6割のシェアを占めるSHOEIは、米国、欧州など世界60カ国以上に販売網を展開している。欧州やタイ、中国に販売子会社を持つが、生産はクオリティーを重視して国内の2工場(茨城、岩手)のみで行う。

 世界トップクラスのレーシングライダーから強く支持されていて、ロードレース世界選手権(MotoGP)で実績のあるマルク・マルケス、アレックス・マルケス兄弟とは2010年から契約を継続中だ。

写真はイメージ ©︎AFLO

 顔全体を覆うフルフェイスヘルメットをはじめ、あごの部分が空いたジェットヘルメット、オフロードレース用、自転車用などさまざまなタイプのヘルメットをそろえている。ヘルメットの硬い外殻はシェルと呼ばれ、転倒などによる衝撃を分散・吸収する役割を果たす。SHOEIのヘルメットのシェルは軽量で強度の高いFRP(繊維強化プラスチック)で製造されている。

 SHOEIのシェアが高い理由は、なんといってもクオリティーの高さだ。SHOEIはヘルメットメーカーとしては珍しく大型風洞実験施設を持つ。そこでは最大で時速230キロメートルの風力実験が可能で、さまざまな実験が行われている。

 また、製造後のチェックも厳しく、完成品の抜き取り検査で年間約3000個ものヘルメットを廃棄しているほどだ。