更生法の適用後は三菱商事の支援で再建を進めた。三菱商事が新社長として送り込んだ山田勝は、商社マンではあるがトヨタ生産方式を信奉しており、トヨタ生産方式で経営改善に取り組んだ。

 老朽化した東京工場の閉鎖、作業員の多能工化、材料在庫の整理などを進めたほか、人事制度の改定を行った結果、倒産から6年後の1998年3月には更生手続きを完了。当初は2003年9月に完了する計画だったので、5年半前倒ししたことになる。

 2004年7月にはジャスダックへ株式公開し、2022年4月には東京証券取引所1部からプライム市場に移行して現在に至る。長年にわたって経営効率化に取り組んだ結果、現在では有利子負債ゼロ、自己資本比率87.1%という超優良財務企業だ(2025年7月末時点)。

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SHOEIの会社データ(『世界シェアNo.1のすごい日本企業』より)

ヘルメットを超えたヘルメット

 SHOEIは自動車部品メーカー・日本精機の子会社NSウエストと提携して、ヘッド・アップ・ディスプレイ(HUD)搭載のフルフェイスヘルメットを製造・販売している。製品名は「OPTICSON(オプティクソン)」。

 自動車のHUDサービスでは、速度やナビゲーション情報はフロントガラス上に映し出され、ドライバーは通常の計器を見るよりも視線の移動距離が短いので安全に運転できる。

 OPTICSONではフルフェイスヘルメットを活用してバイクのドライバーにHUDサービスを提供する。走行時に右の目元のディスプレイへ、目的地までの残距離やレーンガイダンスといったナビゲーション情報が浮かび上がる。さらに、ヘルメット内部にスピーカーとマイクを内蔵しており、ナビゲーション情報は映像と音声でガイドされる。もはや、ヘルメットは頭部を守るためだけにあるのではない。ドライバーの走行全般をサポートするためのツールとして存在する。

 SHOEIは一度倒産した反省から効率性を重視した経営を行った結果、財務体質が極めて安定している。そのため、余裕を持って新技術開発に取り組むことができる。強固な財務体質が技術開発を促進し、それが業績向上につながり、さらに財務体質が向上するといった好循環ができ上がっているのだ。

 世界シェアトップの地位は、簡単には揺るがない。

次の記事に続く 《W杯、五輪、万博も》「従業員は“近所のおばちゃん4人”」の町工場→一大プロジェクトを次々手掛ける業界トップ企業になるまで