脇役たちの人生を掘り下げる第2作
――『星月夜』では、五郎兵衛以外の登場人物たちにもスポットが当たります。第1章の「波と波」では、御用絵師の相談から家老の側近・波岡喜四郎の意外な一面が明らかになり、「碌々亭日乗」では五郎兵衛の部下である安西主税の父親の隠居後の生活が描かれます。
砂原 2作目以降は五郎兵衛以外の人物の生活や人生を掘り下げていこうということは、当初から意図していました。波岡もそうですし、いつも呑気で、やる気のない五郎兵衛の部下の安西主税の私生活なども出てきます。これからもサブキャラクターの掘り下げはしていきたいですね。
――隠居した武家や職人といった、年齢を重ねた世代を描かれることも多いです。
砂原 当時の武家は、50代だと隠居していることも多いです。平均寿命も短いですから、今の年齢プラス10歳ぐらいの年齢をイメージしていただくといいかなと思います。
現代はもっと寿命が延びて、引退後の生活をどうするのかがすごく切実な問題になっていますよね。しばしば時代小説を書いていて、意図せずに現代の問題につながっていたということがあるんです。今作でも、引退後の生活をどう充実させるかといったテーマを、図らずも書くことができたかなと思いました。
白でも黒でもない「あわい」を見つめる
――『星月夜』の後半では、五郎兵衛の長女・七緒が亡き夫の手控えを義母に読み聞かせることから、驚くべき新事実が明らかになります。その事態に五郎兵衛がどう向き合うかが、作品の大きな読みどころとなっています。
砂原 今作のラストでは、五郎兵衛にもなかなかすんなりと受け入れがたいような大きな事件が起こります。そこに彼はどう対処するのかという場面が一つの読みどころです。僕自身も、この作品を読み終わった読者の方に、あなたならどうしますかと聞いてみたいほどです。
僕は、白でも黒でもない「あわい」、つまり間を見つめられるのが里村五郎兵衛である、と思っていて。もやもやしたものをちゃんと自分で受け止められる人であってほしいと願って、『藩邸差配役日日控』という物語を書いています。作者としてはラストの行動こそが里村五郎兵衛なのではと思って描いているので、ぜひ五郎兵衛たちの行く末を見届けていただければ嬉しいです。
