おじさんを引き受けないSMAPと新しい地図
おぐら 気づいたらなってるものではなく、やはり自覚が必要ですか?
速水 引き受けるってあるよ。例えば、SMAP、及び新しい地図の人たちって、おじさんでもおっさんでもないよね。誰も40歳を超えてもおじさんを引き受けなかった。
おぐら 若者の延長線上にいる何かですね。でも、アイドルなのでおじさんになっちゃいけないのでは?
速水 だけど、TOKIOとV6は、30代後半くらいからおじさんになることを個々に引き受けてる感じがする。例えば長瀬くんは、クルマと腕時計と釣りが好きなワイルド趣味おじさん。一番かっこいいのは、森田剛。プライベートで見かけた時には生麻のスーツで決めていて、あれはオヤジ的なファションで、徳大寺有恒とか北方謙三とかヘミングウェイクラスの貫禄だった。
おぐら 全員白髪にヒゲじゃないですか。これからが楽しみですね。城島茂リーダーはどうですか?
速水 リーダーは、突き抜けておじいちゃん感があるけど(笑)。
おぐら なんなら、おばあちゃんっぽさもあります。ちなみに、年齢的には何歳くらいからがおじさんなんですかね?
速水 年々変わりつつも、今は46.7歳がボーダーラインかな。
おぐら そんな細かく基準値があるんですか!?
速水 2018年の日本人の平均年齢が46.7歳。つまり、日本全体の平均よりも若い世代を「おじさん」と呼ぶのはどうかなっていう意味で。
おぐら この前、NHKで『欽ちゃんのアドリブで笑(ショー)』という番組をやっていたんですが、77歳の欽ちゃんが座長で、41歳の劇団ひとりが完全に若手扱いされてたんですよ。今の社会、同じようなことがいろんな現場で起きてますよね。
速水 あと今の世の中は、人を若者でいさせようとする圧力がかかっている。それに40代がはまりつつあるよね。おぐらくんって今いくつだっけ?
おぐら 37歳です。
速水 例えばTシャツひとつとっても、今年のサイズ感があったりして、ワードローブの服は毎年増やさないとやっていけないでしょ? パンツの太さとかも。
おぐら 若者っぽい服装の変化はありますよね。ここ何年かはオーバーサイズが当たり前になっていたりとか。
速水 昔の37歳は、そういうの気にしてなかった。流行のサイズ感でTシャツを買い替えたりしない。おぐらくんはするよね。
おぐら してますね……。
速水 流行に敏感な若者でいさせようとする圧力って、つまりは消費社会の論理として存在する。前シーズンの商品を古く感じさせるような仕掛けをマーケティングの世界では「陳腐化」って呼ぶんだけど、それに乗り続ける限りはおじさんじゃないよってメッセージでもある。
おぐら わ! いつの間にか消費社会に毒されていた! ファッション雑誌や車の広告とかが発信している「少年の心を忘れるな」っていうのは、つまり「商品を永遠に買い換えろ」って意味だったのか! UOMO が主張している「40歳男子」なんて、まさにそれだ!
速水 ふつうは大人になると住宅ローンにお金がかかったり、可処分所得が低くなっていく。無駄な文化にお金を落としてほしい消費社会にとっては都合が悪い。でもいまの40代は、なんやかんやいって、消費社会にもちゃんと身を置こうとする。