おぐらりゅうじ(右)=1980年生まれ。編集者。速水健朗(左)=1973年生まれ。ライター。

ドラマによる「おっさんの発見」

速水 今日は「おっさん」または「おじさん」をテーマにしゃべろうかと。

おぐら まずは、テレビ朝日のドラマ『おっさんずラブ』がヒット。女性たちから絶賛されました。一方SNSでは、フルーツパーラーで汗を拭きながらパフェを食べるスーツ姿のおじさんたちが「かわいい」と言われたりもして。

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速水 でも、そのおじさん好きって女性側のずるさもあるよね。抱かれてもいいっていう好きとは違うわけでしょ?

おぐら 違いますし、別にずるくはないですよ。キャラクターとしての消費に近いんでしょうかね。出川哲朗さんも、かつてはあれだけ嫌われていたのに、キャラ化してから好感度が爆上がりしました。もはやリアクションの大きいおもちゃみたいな扱いです。

速水 『バイプレイヤーズ』も本来イケメン、二枚目で勝負してきてない俳優たちのかっこよさに注目して話題になった。「おっさんの発見」だよね。ちなみに、あれはおっさんといっても、もう50代後半の「初老」俳優陣なわけだけど。

 

おぐら 「エアポート投稿おじさん」のように、おじさんを類型化したネタもSNSでは盛り上がります。これが若い女性の類型化になると、「午後ティー女子」の広告みたいに炎上するわけですけど、おじさんはまだいじってOKという空気もありますね。

速水 「おっさんポリス」はまだ少ないというか、その語感だと単なる年配のおまわりさんでしかない。

おぐら 「おっさんの発見」的な流れとしては、2017年には「キモくて金のないおっさん」(KKO)もありました。

速水 実は社会的弱者として一定層存在しているけど、救済されにくい人たちとして40代の非正規雇用男性がいると。

おぐら キャラではなく、完全に実体を伴ったおじさん。

速水 20代、30代の男性の非正規雇用率が5人に1人なら、40代男性のそれは3人に1人。ちなみに「キモくて金のないおっさん」世代は、かつての「ロスジェネ世代」のその後という。

おぐら その後の世代は、今の世代が超売り手市場と言われて数年ですけど、雇用ではずいぶんと恵まれました。30代後半くらいが、実は就職としては最悪の時代。

 

速水 結局、おっさんラブ的な話でいい話は大体50代、リアルで厳しいおっさんの話は40代。でもそもそも、おじさんになることを引き受けるか引き受けないかって問題があるでしょ。