「翔平の『すみません』という言葉を初めて聞いた」

 押せ押せムードとなった日本は内野ゴロと岡本和真のスリーランで一挙4得点。大谷は流れを呼び込んだバントについて「極端な守備シフトだったので、無理に引っ張って正面に打球が行ってダブルプレーが最悪。リスクを回避しながらハイリターンを望める選択をして、結果的にビッグイニングを作れたのでよかった」と意図を説明した。

今大会では打者に専念するという大谷 ©文藝春秋

 ところが4点リードの5回、快投を続けるピッチングが一変する。ヒットとデッドボール2つでツーアウト満塁のピンチを背負うとタイムリーを許し2点を失った。なおも塁上には2人のランナーが残り、栗山が動く。伊藤大海に託した。

 大谷がマウンドを降りるときに「すみませんでした」と発した。この様子を見た栗山は「翔平の『すみません』という言葉を初めて聞いた」と後に振り返った。

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 伊藤は先発だけでなくリリーフでもイニングまたぎ、イニング途中での登板といったタフな起用にも応えられる適応力とメンタルの強さがあり、そこを高く買われて代表入りを果たしている。伊藤は相手バッターをショートフライに打ち取り、首尾よくピンチを切り抜けた。継投策がはまって追加点を防ぐと、勢いづいたチームはその後も得点を重ねて9対3で勝利を手にした。

 5番で起用された村上はツーベース2本、1打点。骨折しながらも戦列に戻った源田にもタイムリーヒットが出た。試合後の会見で栗山は選手起用について多くは語らず、次の試合への思いを話すにとどめた。次戦の舞台はいよいよアメリカだ。

「若い選手が多いので、野球が生まれたアメリカに行って、そこで活躍する選手たちを相手に何が何でも試合させたいというのがあったので。本当の勝負はここから始まる」

 一方、4番から外れたものの当たりが戻った村上は「栗山監督もいろいろと考えて声をかけてくれていたし、ずっと考えてくれていた。監督を悩ませてしまって、もっとしっかりしないといけないと思った」と浮かれる様子は微塵もなかった。

次の記事に続く 「翔平ここだけはやめてくれ」2023年のWBC決勝、栗山英樹がマウンドに立つ大谷に感じた“懸念”と『優勝を確信した瞬間』

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