一枚板のカウンターを前に、職人が丹精込めて握った寿司を食べる――寿司店といえば、接待にうってつけなイメージもあるが、ビジネスと食の現場に詳しいノンフィクション作家の野地秩嘉氏によると、「接待のなかでもっとも難度の高いのが寿司店」だという。では、接待に向いているのは何の店なのか? 同氏の新著『一流の接待』(小学館)から一部抜粋してお届けする。(全4回の4回目/最初から読む

寿司店よりも接待に向いている業態とは? ©mapo/イメージマート

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寿司店より接待に向いているのは……

 寿司店とは逆に、接待に向いているのが天ぷら専門店だ。ひとつには天ぷらはコース料理が主だから、ホストがいろいろ注文しなくて済む。アラカルトで注文する気苦労が要らない。また、天ぷらは好き嫌いがある人でも対応できる。海老と魚がダメな人は野菜の天ぷらだけを食べればいい。ベジタリアンの外国人を招待しても、満足してもらえるのが天ぷら店なのである。

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 加えて、高級な天ぷら店には個室がある。天ぷら職人の揚げ方を見ながら食事をするのは悪くない。外国人にとって日本料理ができていく過程を見られる店が天ぷら店だ。さらに天ぷらという料理は酒を選ばない。日本酒でも、ワインでも、ハイボールでも、どれでも合う。それぞれ好きな酒を注文して味わえばいい。

 天ぷら店での接待で気をつけることといえば、コースが終わって、まだお腹がいっぱいになっていない場合だろう。その場合は天丼や天茶漬けに至る前に天種(てんたね)をひとつかふたつ注文する。「アナゴをもう一度、お願いします」といったような注文だ。 

 天丼と天茶漬けの両方を食べたいという人もいるかもしれないが、それは食べすぎだ(ゲストがどうしても、と言ったら、もちろん心おきなく食べてもらえばいい)。せいぜい、「ご飯を大盛りにしてください」と言う程度にしておくこと。天ぷら店の接待は盛り上がる。やったことのない人は一度、使ってみるといい。