時代の変化、そしてコロナ禍もあって激減しつつある接待。一方、数少ない場面でインパクトを残せれば、ビジネスへの好影響をもたらすのは間違いない。そこで今回は、ビジネスと食の現場に詳しいノンフィクション作家の野地秩嘉氏が、接待のプロたちを取材した『一流の接待』(小学館)から、接待におけるタブーや、商社の雄である伊藤忠商事・岡藤正広会長の凄まじい接待テクニックを紹介する。(全4回の2回目/続きを読む)
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「初めての店」には絶対に行くな
「初めて行く店」はプライベートなら楽しいだろうが接待は別。「行ったことのない店を接待に使う」ことはやってはいけない。わたし自身、「僕は行ったことのない店ですが、なかなか予約が取れない店なので、そこを取りました」と言われ、招待されたことがある。高級店だったから、サービスは悪くなかった。しかし、店側もまた困惑している様子だった。
出席者が全員、初めて行った店の場合、サービスする側は神経質になっていて、用もないのに何度も確かめにくるのである。また、初めての店ではワイン選びが難しい。ワインの値段はフランス料理店だと1本4000円くらいから、上は10万円以上までさまざまある。ソムリエは初めての客にはいくらくらいのワインを勧めていいのかわからない。
ホスト(主人側)もソムリエから「この料理でしたら、これくらいのワインがいいです」と言われたら、「安いのはないか」とは言いづらい。結局、何本も候補を挙げて値段を探ることになるから食事の時間が長くなってしまう。
正式な接待でなくとも、仲間内の会食やデートであっても、行ったことのない店を利用するのはリスクが大きすぎる。行ったことのない店でデートした場合、女性(あるいは男性)は連れてきた男性(女性)に対して不信感を抱くだろう。接待する時、一度も使ったことのない店を指定するホストがいる。そのホストは勘違いをしている。
彼は「接待するのは店のサービス係だ。ホストである自分は食事の代金を払えばいいだけ」と思い込んでいる。ここが最大の問題である。この考え方を改めない限り接待の達人にはなれない。接待でも会食でも、ゲストをもてなすのは主人だ。店ではない。
