文春オンライン

ボランティアにさえ、肩書きが欲しい「世界一孤独な日本のおじさん」

2018/08/24

「孤独にならない自衛策」を模索するしかない

 日本の男性だけが、特に孤独耐性が高いとか、昔から男性は孤独だった、などといった事実はない。もちろん、短期間、一人の時間を楽しんだり、一時的な孤独を乗り越えなければいけない場面はだれにでもあるだろう。問題は、日本の現代の社会環境の変化によって、長期間、人に会わない、頼る人がいない、という真の孤独に苦しむ人が増加していることだ。孤独は健康、寿命、幸福感、社会全体の寛容性に極めて重大な負の影響をもたらす。孤独を美化し、これだけ多くの人たちを「置いてきぼり」にして、何の対策もとらない社会であっていいわけがない。

©iStock.com

 海外では国を挙げての取り組みが進んでおり、イギリスでは「孤独担当大臣」まで誕生し、24時間、365日の電話ヘルプライン、老若男女の交流機会の創出など、多額の予算をかけて、社会が一体となった対策が進む。日本でも機運の盛り上げも必要だが、それにはまだ時間がかかるだろう。NGOやボランティア、コミュニティーなどの、地縁・血縁に代わる受け皿が海外の国々に比べ、限りなく貧弱なこの国では、今のところ、個人として、「孤独にならない自衛策」を模索していくしかない。

「3Kから3S」へのライフシフトを

 そこで、人生百年時代をオジサンが長く、豊かに生きる心得として、「3Kから3S」へのライフシフトをお勧めしたい。3Kとは「会社」「肩書」「家庭」、3Sとは「仕事」「趣味」「社会貢献」のことだ。「会社」や「肩書」にしがみつく生き方についての問題点については前回の記事で詳述した。「家庭」はもちろん、大切にすべき存在だが、妻や子供には自分たちの付き合いがあり、気が付くと、自分は邪魔者扱い、ということも少なくない。「家庭」だけが居場所、というのは実はリスクが高い。

ADVERTISEMENT

 まず「仕事」というのは、結局、男性の生きがいは働くことによって得られるものがやはり大きいわけで、であれば、働き続ける方策を探り続けるしかないということだ。そのためには、「会社」という枠にとらわれず、自分なりの強みや技を生かして「職」を続ける算段をつけておく必要があるだろう。退職後、「どんな仕事ができますか」と問われて、「部長ならできます」と答えた人がいるというジョークがあるが、地位や肩書ではなく、専門性やスキルセットをアピールできるようになっていなければならないということだ。いつでも、学びなおしはできるし、何事も始めるのに遅すぎることはない。最近はシニア対象の人材派遣会社なども増えている。自らの腕を鍛えて、「一生現役」を貫く人生設計をしておくのも悪くない。

©iStock.com

 2番目の「趣味」。これが案外、難しい。女性は習い事が好きな人が多い。ある調査によると、習い事をしている割合は女性の38%に対し、男性は20%に過ぎなかった。高齢者の取材に行くと、やはり女性は多趣味で、何かと忙しそうだ。そういう人たちに夫は何をしているのかと聞くと、たいていは「家にいる」「図書館に行っている」と答える。地方の自治体も、高齢者向けのサークルや趣味の場をいろいろと提供しているのだが、参加者の多くは女性で、自治体の人たちはどうしたら男性を誘い出せるのか、苦心している。身の回りの男性に聞いても「趣味がない」とぼやく人は多い。しかし、そもそも、自分から積極的に探してはいない、という人も多いようだ。

「働き方改革」で労働時間が短くなったという人はそれをきっかけに、何か新しい趣味を始めてみてはどうだろうか。趣味が高ずれば、様々なつながりが広がる。最近はマツコデラックスさんの番組に出るような一風変わった趣味やこだわりを持つ人が「面白い」と注目を集めるなど、思いっきり個性的でニッチな趣味がウケる時代でもある。オタク的な趣味も大いに結構。スポーツ、園芸、モノづくり、芸術、料理…。役所の広報や掲示板などには、多くの集いの情報が掲載されており、男性向けの趣向のものも増えている。初めの一歩は、早ければ早い方がいい。