2023年のWBC第1回戦、中国戦で先発し、東京ドームを異様な静寂と大歓声に包み込んだ大谷翔平。韓国戦、チェコ戦と、日本ラウンドで彼は投打にどんなインパクトを残したのか――。
アメリカのベテラン記者、ジェフ・フレッチャーの著書『SHOーTIME2.0 大谷翔平 世界一への挑戦』(訳=タカ大丸、徳間書店)より一部を抜粋し、世界的スターが見せた圧倒的な存在感と、思わぬドラマが生まれた舞台裏に迫る。(全4回の2回目/3回目に続く)
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初球を投じる直前の静寂に「鳥肌が立ちました」
参加国は20カ国だったが、日本は5チームが入ったプールBに加わり、東京ドームで中国、オーストラリア、韓国、チェコと対戦することになった。
日本が次のラウンドに進むためには、このプールで2位までに入る必要があった。
このなかでは、まともなプロリーグがない中国とチェコが格下と見なされていて、韓国とオーストラリアでさえ、日本よりは弱い存在だというのが一般的な見立てだった。
大谷は大会の初戦、中国戦で日本代表の先発投手として登板した。
満員となった東京ドームの観衆が大谷に声援を送ったが、初球を投じる直前には無言となり、投球後に再び大歓声が沸き起こった。
「あのスタジアムの静寂、満員の球場での静けさには、鳥肌が立ちましたね」
大谷はそう振り返った。モタもその瞬間をこう話す。
「何か不思議な感覚だったね。放送関係者としては、球場全体があれほど無言を貫いているなかで実況解説を喋り続けるのは、場の雰囲気を邪魔しているようで気まずい思いだった」
日本代表選手たちも「最初の1球を投げるときは感動しました」
日本代表で大谷のチームメイトだった選手たちでさえ、今までテレビで見ていた選手が同じ球場にいることに感慨深かったという。
「今まで僕たちは、彼がプレーする姿を生で見たことがなくて、だから、最初の1球を投げるときは感動しましたね」
二塁手の牧秀悟は、興奮しながらそう振り返った。
結局、大谷は4回無失点に抑え、中国に8-1で勝った。
ファンとしては大谷にもっと長いイニングを投げてもらいたかったが、大会規則により投球数は各ラウンドで厳密に制限されており、大会が後半になればなるほど球数が増えるようになっていた。
大谷は一度、球速100マイル(約161キロ)を記録し、99マイル(約159キロ)も数回出して、3月上旬としては上々の出来であることを自ら証明した。打席では、4打数2安打で、うち1本は2点タイムリーツーベースだった。あとの2打席では四球を選んだ。
