チェコの投手が大谷から記念すべき三振を奪った

 この次の日、日本は韓国と対戦した。3回に3点を取り、最終的に13-4と大勝した。大谷はさらに2安打を放ち、2つの四球を選んだ。

 日本の第3戦はチェコ戦で、誰がどう見ても最弱の相手だった。

 そもそも野球自体が、ヨーロッパ諸国において新しいスポーツである。そのほかの19チームを見ると、大なり小なりプロ選手が加わっているが、チェコに限っては仕事の合間の自由時間に練習するだけの男たちが集まっていた。

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 チームにはセールスマンがいたり、地理教員がいたり、消防士や電気技師がいたりするが、野球をしていて、いちばんの楽しみな時間をここで過ごせるというわけだ。

 左腕投手のオンジェイ・サトリアが日本代表に対して第1球を投じた。身長5フィート9インチ(約175センチメートル)の26歳の青年が投げられるのは最速79マイル(約127キロ)で、球速だけでいえば高校生程度だ。

WBC日本戦、試合開始直前のチェコ代表チーム ©文藝春秋

 1回に、打者・大谷と対戦し、4球続けてチェンジアップを投じ、大谷をファーストゴロで打ち取ることができた。

 この2人は、再び3回に対戦することになった。サトリアは大谷への初球でストレートを投じ、ストライクをとった。それから2球続けてチェンジアップを投じると、大谷は空振りして3球三振となった。

 チェコのベンチは、まさか仲間の投手が世界最高の選手から記念すべき三振を奪うことができるとはと、大喜びだった。

 サトリアはこの記念球を受け取り、マウンドで土を払い落とした。この球を、大谷が自身のチェンジアップに空振りした場面の写真とあわせ、自宅に飾る予定だという。

「リスペクト」という言葉を掲げ、チェコ代表チームの写真をあげた

 試合は当然、日本が10-2で勝ったが、大谷は自身の三振を冗談で笑い飛ばしつつ、正々堂々と挑んできた相手への敬意も忘れなかった。

 自身のSNSのアカウントに「リスペクト」という言葉を掲げ、あわせてチェコ代表チームの写真をあげた。

 それからサトリアと一緒に写った写真もあわせ、チェコ代表選手全員がサインしたユニフォームも掲げてみせた。

「彼のインスタグラムには、本当に感謝しているんだ」

 サトリアはこう語った。

「われわれに敬意を示してくれたこと、それはものすごく大きなことなんだよ。あらためて強調するけど、僕らはアマチュア選手だからね。一方であちらは現役のなかの世界最高の選手だからね」

次の記事に続く 「こんな場面を見たくない人がいるかい?」大谷翔平vs.トラウトの頂上対決に世界が興奮…2023WBC決勝で実現した“夢の対決”

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