このアプリは、トップの会長から末端の新人スカウトに至るまで、メンバー全員がログインしてスマホ上で使用する。詳しい経緯は割愛するが、我々も関係者の協力によってこのアプリを使用する機会を得ることができた。それは、ITの専門家も驚くほど精巧にできていた。チャットやファイル共有、通話などあらゆる機能が搭載され、ビジネス界でひろく使われるマイクロソフト社製「Teams」などのコミュニケーションツールと比べても遜色がない。さらに、メンバーの出退勤の管理や位置情報の把握、給与額の閲覧などもでき、“業務”のすべてがこれ1つで事足りるようになっている。
裏切り者は「指名手配」も
「アプリが入った仕事用のスマホは、プライベートも含めて24時間常に持ち歩くよう指導されます。アプリがないとスカウトの仕事が何もできないですし、起きている時はだいたい常にチェックしていますね」(現役メンバー)
メンバーへの教育も徹底している。アプリの中には、実務的なことだけではなく、心構えや日ごろのマナーを説く記述が実に多い。冒頭、新人向けに書かれているのが次のような言葉である。
〈会社の方針として『謙虚』があります。トラブルを起こさないようにしましょう〉
さらに、〈社内礼儀〉と題して、挨拶や電話の受け答え、会食時のマナーなどの所作が事細かに記されているほか、〈会社規約で禁止している事〉として外部に情報を漏らすなどの裏切り行為をした場合には数百万円単位の罰金を科すことが明記されている。規約を守らずに逃げようものなら、アプリ内で顔写真や本名が晒され、「指名手配」されることもある。学生時代に軽いアルバイト感覚で組織に入ったものの、簡単には足を洗えず、恐怖心を抱えながら所属するメンバーも少なくないという。
本社には約150人が所属
内部のフォルダに格納されている資料の中には、社内機構の説明もあった。そこには会長以下、執行役員、専務、代表、本部長など、まるで大手企業のような肩書が並ぶ。また、総務課、サポート課、集金課など様々な部署があり、実在するオフィスこそないものの、本社には約150人が所属している。
各スカウトグループを統括する本社のメンバーは、現場のスカウトから選抜されて採用されることが多いが、外部から優秀な人材を登用することもある。特に重視されるのが、警察対策を担う「プロ課」である。
「プロ課の方々は本社でも特に優秀というか、頭がキレる人が多くいます。スカウトに関係する風営法の改正について勉強会をやっているのも、プロ課の方々です。あとは、研修も担当します。営業をバリバリやっているような会社に在籍していた人もいて、新人向けのマニュアルなども作っています」(現役メンバー)


