イチローさんから「所作の美しさ」を学ぶ。
あれから18年もの歳月が流れ、まさかあの日、遠くから憧れの眼差しで見ていた方と、同じチームで、たとえ1試合だけであっても、共にプレーできる日が来るなんて……。僕の野球人生においても、これほど忘れられない日はありません。
イチローさんは引退された今も、シアトル・マリナーズをサポートしています。そのため、僕がマリナーズ在籍中はトレーニング器具を使わせていただきましたし、ときには食事をご馳走になったりする機会にも恵まれています。そんな時間をご一緒させていただく中で、僕がいつも心を奪われるのは、その「所作の美しさ」です。
毎日、新品のようにピカピカに磨き上げられているスパイクやグローブ。まるで大切な宝物を扱うかのように、丁寧に置かれるバット。流れるようにスムーズなトレーニングフォーム。トレーニングマシンを扱う手付きさえも、美しく、無駄がありません。
それはグラウンドの中だけの話ではなく、食事の席でも同じです。焼肉のお肉を1枚ひっくり返す手付き、ワインを注いでくださる際の澱みない動き。そして何よりも、イチローさんから発せられる一つひとつの言葉が、選び抜かれていて、本当に美しいのです。
無駄や雑な要素が、そこには一切存在しない──。その姿は、今から24年前、岩手県営野球場で僕が見たあの光景と重なります。初回に敬遠四球を受けたイチローさんが、手にしていたバットをそっと、本当にそっと、地面に置いたあの美しい姿。今、目の前にあるすべての所作の美しさは、あの日に僕が感じた美しさと、たしかに繋がっているのです。
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