少子化をはるかに上回るスピードで減少し続けている少年野球人口。メジャーリーグで活躍する菊池雄星もまた、故郷・岩手で「部員不足で廃部寸前」というチームの厳しい現実に直面していた。
年に1回、プロの選手が野球教室を開くだけでは、いわば一瞬の“打ち上げ花火”に過ぎない。子どもたちが常に野球に触れられる「土壌」を作らなければ意味がない――。
そう決意した菊池は、構想から10年の歳月をかけ、2024年に岩手県に国内最大規模の民間野球施設「King of the Hill(K.O.H)」を完成させた。亡き父の教えを胸に、彼が次世代へ託した熱い想いとは。『こうやって、僕は戦い続けてきた。』(PHP研究所)より抜粋して紹介する。
◆◆◆
「K.O.H」をつくった本当の理由。
近年、少年野球の人口が減っているという話をよく耳にします。それは漠然とした雰囲気などではなく、具体的な数字として表れていて、少子化の実に8倍ものペースで減少しているというデータもあるほどです。僕の故郷である岩手県も例外ではなく、少年野球チームの数は減り続けています。そんな現実に、僕自身が真正面から向き合うことになる出来事が起きたのは、2014年のことでした。
ある知り合いの少年野球の監督から、一本の連絡が入りました。
「このチームは来年、新しい選手が入ってこないと廃部になります。そこで、お願いがあります。雄星さんが全校生徒に向けて野球をしてもらって、それでも人が入らなかったら、もう諦めがつきます。どうか一度、子どもたちと野球をしてもらえませんか?」
オフシーズンを迎え、僕はその小学校へ向かいました。そして、全校生徒と一緒に野球をしました。子どもたちの目はキラキラと輝いていて、ボールを追いかける姿は、僕が野球を始めた頃の純粋な喜びを思い出させてくれました。それから数週間が経った頃、監督から「あの日から、20人も部員が増えました。これで、あと3年間は活動できます」と、涙ながらに電話をいただき、僕も心の底から嬉しい気持ちになりました。
