年に1回の野球教室は『打ち上げ花火』のようなもの、本当に大切なのは…

 ただ、一つのチームが未来をつないだことの喜びと同時に、僕の心の中には別の感情が芽生えていました。

「年に1回の野球教室は、いわば『打ち上げ花火』のようなものではないか。その瞬間はとても鮮やかで、感動的で、人々の心に強い印象を残す。でも、花火が終われば、残るのは『あぁ、綺麗だったね』という思い出だけ。本当に大切なのは、一瞬の輝きではない。大切なのは、常に子どもたちと共にあり、彼らがいつでも野球に触れられる環境、その土壌そのものをつくることではないか」

 そう強く思ったのです。

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菊池雄星 ©文藝春秋

 構想と施工に10年の歳月をかけ、2024年の11月、僕は故郷の岩手県に、「King of the Hill」(K.O.H)という野球施設を完成させました。国内の民間施設としては、最大規模のものです。

 もちろん、野球人口が減っている原因は一つではありません。さまざまな要因が複雑に絡み合っており、この施設一つですべてが解決するとは考えていません。しかし、この場所で練習した子どもたちが、野球の世界に限らず、さまざまな分野で活躍する人間に育ってくれたなら。そして、その姿を見た後輩たちが、「俺もできる」「あの人ができたんだから!」と、自分の可能性を信じるきっかけになってくれたなら。それこそが、僕がこの施設に託した本当の夢です。打ち上げ花火の思い出ではなく、次々と新しい希望の火を灯していく。「King of the Hill」がそんな場所になることを心から願っています。

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