「ROE8%の呪縛」
大手民放のFMHに魅力を感じて株を保有していた株主の中には、未公開企業ゆえ株式市場で売り買いができないサンケイビルの株式を株式分配してもらっても、ありがたくないと思う人が出てきても不思議ではない。中には売りたいと考える株主もいるかもしれない。村上はスピンオフされたあかつきには、そうした手放したい株主から安く株を買い集める算段でいた。
とはいえ、さすがにスピンオフの提案は無理筋と思ったのか、村上は「完全売却でもいいです。もしフジが入札を実施するのならば、自分もビッドしたい」と要求している。その際には「3500億円で買い取りたい」と、サンケイビルの具体的な買収価格についても初めて言及した。
いずれもFMHにとっては、おいそれとは呑めない要求だった。村上はそれを知ったうえで、敢えて高めのボールを投げたと思われる。相手が呑めない要求を突きつけ、それによって相手の譲歩を促し、自身の狙うところに誘導する――。彼の常套手段だった。
その譲歩を促す材料に「ROE8%実現」があった。分子となる利益が思い切り伸びればいいのだが、そうでなければ分母となる自己資本(純資産)を縮めるしかない。清水は自身が公約した「ROE8%」に縛られていた。「ROE8%の呪縛」。ここが、ポイントである。
清水はこの半年間、譲歩に次ぐ譲歩を重ねてきた。
《この続きでは、サンケイビルなどをめぐるFMH側と村上の交渉の内幕を詳しく報じている。記事の全文および連載第1回、第2回は現在配信中の「週刊文春 電子版」で読むことできる》
