欧州指導者は「米国の召使い」か

 トッド氏の分析はさらに根源的な問いへと向かう。「欧州の指導者たちの振る舞いは、多くの大きな疑問を投げかけます。彼らは自国民の代表なのか、それとも米国の召使いなのか、判然としないからです」

 その実例として、トッド氏は二つのエネルギー危機を挙げる。「例えば、ロシアからのガスパイプラインを破壊されても欧州はまともな反応ができず、また現在進行中のイランの危機に対しても、適切な対抗策を講じることも、反論すらすることもできていません」

左からトッド氏と、通訳を務めた堀茂樹氏

 ロシアからのガスパイプライン破壊は「欧州を恒常的な経済危機の状態に陥れた」とトッド氏は指摘する。そして今、イラン戦争による「ホルムズ海峡の封鎖と欧州への石油・ガス供給の停止」という「第二のエネルギーショック」が迫っているという。

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イランだけでなく欧州諸国も攻撃している

 トッド氏は、衝撃的な仮説を提示する。「米国は今回イランを攻撃したとされていますが、本当に対象はイランだけなのでしょうか。結局のところ、米国はイランだけでなく、欧州諸国をも攻撃しているのではないでしょうか。トランプ政権の発足以来、米国指導者たちは欧州を屈辱的に扱ってきた。ヴァンスも早い段階からそうしていた」

 こうした観察から、トッド氏は結論に至る。

 

「その背後には、現代米国のニヒリズムが垣間見えます。米国の国際的な行動を合理性の原則だけで解釈しようとすると、本質を見誤るでしょう」

 トッド氏は、次のように断じる。

「米国の行動は、合理性から逸脱した衝動、あるいは暴走するニヒリズムの表れと見るべきです。これは純粋なカオスであり、従来の地政学や外交問題の枠組みでは捉えきれない次元の問題を含んでいます」

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