主人公のグレースは中学校教師
主人公のグレースは、生命にとって水は必須ではないという論文を書いたせいで大学を追われ、今は中学校で科学の教師をしているという設定。アストロファージの発見が彼の先見性を証明した恰好になり、研究プロジェクトにスカウトされた彼は、短期間に目覚ましい実績をあげ、ついには地球を救うため、ヘイル・メアリー号に乗り組むことになる。その彼の強力な相棒が――という話は読んでのお楽しみ。
予備知識ゼロで本を開いても、次々に明らかになる驚愕の真実、次々に降りかかる難題、“相棒”との愉快な交流が物語を牽引し、上下巻900ページ超を一気読みさせてくれる。現代SFには珍しく、科学の可能性を信頼し、ポジティブな未来観を持っていることもウィアー作品の美点だろう。映画を観てから原作を読むのもいいが、どうせなら読んでから(あるいは聴いてから)観るのがお薦め。
おおもり・のぞみ 1961年、高知県生まれ。書評家、翻訳家、SFアンソロジスト。北上次郎との「読むのが怖い!」シリーズ、豊崎由美との「文学賞メッタ斬り!」シリーズなどの著書に加え、翻訳書もフィリップ・K・ディック『ザップ・ガン』、劉慈欣「三体」シリーズ(共訳)ほか多数。
INTRODUCTION
映画『オデッセイ』(15年)の原作となった小説『火星の人』のアンディ・ウィアーによる同名ベストセラーに、主演のライアン・ゴズリング自身が惚れ込んで映画化の運びとなった本作。ライアンは「これを映画化できるのは彼らしかいない」とアカデミー賞長編アニメ映画賞受賞作『スパイダーマン:スパイダーバース』(18年)のフィル・ロード&クリストファー・ミラーに依頼したという。脚本に『オデッセイ』のドリュー・ゴダードを加え、このハードSF大作に臨む。
STORY
中学教師グレース(ライアン・ゴズリング)が目覚めると、そこは宇宙船の中だった。一体なんでこんなことに……記憶をたどっていくうちに、太陽エネルギーが奪われ、地球の気温が低下。全生命滅亡の危機にある地球を救うために、11.9光年先の星に向かう「プロジェクト・ヘイル・メアリー」というイチかバチかの大作戦に彼が参加したことを思い出す。旅を続けるうち、グレースは自分と同じく愛する故郷を救うために、ひとりで奮闘する異星人と出会う。グレースは彼をロッキーと呼び、難題に取り組むことに……。
STAFF & CAST
監督:フィル・ロード & クリストファー・ミラー/出演:ライアン・ゴズリング、ザンドラ・ヒュラー、ライオネル・ボイス/2026年/157分/アメリカ/配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
