宇宙、科学、人類の存亡を賭けたミッション――。
緻密で理知的なハードSF小説『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の映画化でメガホンを取るのは、「LEGOR ムービー」「スパイダーマン:スパイダーバース」シリーズといったポップで軽やか、エモーショナルな娯楽映画を得意とするフィル・ロード&クリストファー・ミラー。彼らの作品を知る人たちにとっては、少なからず驚きを持って受け取られたかもしれない。
普通の主人公によるカタルシス
ただ、ふたりのフィルモグラフィを見渡してみると、実写とアニメーションを越境し、さまざまなジャンルを渡り歩く作品群には、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』といくつもの共通点があるのだ。
たとえば、レゴブロックの世界を奔放なビジュアルで表現した『LEGORムービー』(14年)の主人公はマニュアル通りの毎日を送る建設作業員。『スパイダーマン:スパイダーバース』(18年)でスーパーヒーローになるのは落ちこぼれ気味の少年、監督作の「21ジャンプストリート」シリーズも正義漢やエリートではない新人刑事ふたりが主役だ。
振り返れば、ロード&ミラーは“ごく普通の主人公”を描き続けてきた。物語が始まった時点で、彼らは世界のありようを把握していないどころか自分の生活で手いっぱい。しかし、その個人的な感情と人間関係から始まった物語が、やがてより大きな――彼らの住む世界や多元宇宙さえ巻き込む――問題に接続され、スピード感とカタルシスに満ちた映像的スペクタクルが立ち上がってくる。
「大切なのは“人”ではなく“関係”を描くこと」だとロード&ミラーは言う。主人公と人々、そして世界の関係だ。

