田中容疑者の行為を「うらやましいと思った」
「私は多くの子に時限爆弾を仕掛けてしまいました。しかもそのトラップを解除したくともできず、またその方法もわかりません。自分でやっておいて何を言っているんだと思われるかもしれません。今はただただ、自分の無力感に打ちひしがれ、罪の重さとその十字架を背負っていかなければと、痛感しております」
子ども時代の性被害のトラウマを「時限爆弾」と表現する当事者は、男女問わずいる。被害の瞬間や直後ではなく、後になって深刻な影響が表れることが珍しくないからだ。男性には被害者のその表現が胸に刺さったらしい。
田中の今回の事件の被害者である男児たちには、今のところ、目立った影響は出ていないそうだ。だからといって、時限爆弾がこの先もずっと弾けないとは限らない。
「被害者が加害者に望むことは、死んでほしいとか、反省してほしいとか、人それぞれあると思います。しかし、おそらく皆が口を揃えて言う最も大事なことは『新たな被害者を出さないでほしい』だと思います。今回、田中容疑者が再犯したことによって、石丸さんのそういった思いも打ち砕かれてしまったのではないかと想像します」
現在の男性は、被害者の視点に立ち、その思いを想像することができるようになった。
だが、そんな男性なら、田中のように事件を繰り返す恐れはないのだろうか。
男性は「書くかどうか迷ったのですが」と前置きし、田中の立場へと視点を移した。
「加害の場面は、容易に想像ができてしまい、自身の加害が呼び起こされ、気持ちが高ぶり、うらやましいと思ったのが正直なところです。私は治療を受けていないので、認知が歪んだままです。(略)今のありのままの姿を知っていただきたいと思い、書かせていただきました」
自身の罪深さを痛感しながらも、加害行為を「うらやましい」と思ってしまう。それこそが、男性が小児性愛症という精神疾患だと自認している理由でもある。
※この続きでは、服役中の元ベビーシッターの男性が自らの「認知の歪み」を語っています。約5500字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(連載「ルポ男児の性被害」第9回・後編)。「文藝春秋PLUS」では、この他にも多数の関連記事をお読みいただけます。
これまでの連載と後日談は、『沈黙を破る 『男子の性被害』の告発者たち』(文藝春秋)として書籍化されています。
■連載「ルポ男児の性被害」(秋山千佳)
・「成長はどうなっているかな」小学校担任教師による継続的わいせつ行為《被害男性が実名告発》
・《異例の逆転勝訴》性被害から20年、クラスメートの新証言がわいせつ男性教諭の数々の“嘘”を暴いた
・《賠償金約4000万円》法廷でも被害者の人格を攻撃 わいせつ男性教諭に画期的判決が下った“3つの理由




